NTTドコモやKDDIが保有する800MHz帯が割り当てられていないことに対して、常日頃から不満を表明しているソフトバンクモバイル。同社はドコモやKDDIと比べた端末のつながりずらさや携帯電話の接続料の差も、保有周波数帯の差が理由の一つと主張している。
もちろんこうした動きは、今年後半にも割り当て作業が始まる見込みの700M/900MHz帯、特に900MHz帯獲得に向けた同社の戦略の一環だろう。そんな中、同社の新たなアピール材料となるような実証実験が埼玉県熊谷市で行われた。
同社は2011年3月1日から6月30日の期間に、埼玉県熊谷市でLTEの実証実験を実施した。同社はこれまでにも茨城県水戸市や北九州市八幡東区でLTEの実験を行っている(関連記事:ソフトバンクモバイルがLTE実験,3Gと同じ環境で100Mbps超の実現を目指して検証、ソフトバンクモバイルがLTEの実証実験を公開)。
今回の熊谷の実験では、実験局として800MHz帯を5MHz幅、商用利用中の2.1GHz帯を5MHz幅用いて、周波数帯の違いを比較したのが最大の特徴だ。また北九州市で前回実施した、複数基地局の協調によってセル端のスループットを改善する技術についても一歩進んだ取り組みを見せている。これらのデモの様子を写真を中心にリポートしよう。
800MHz帯ではスループットが1.5~2倍改善
まずは実験の構成を確認する。基地局は全部で5局(写真1)。800MHz帯に対応する局が2局、2.1GHz帯に対応する局が1局、800MHz帯、2.1GHz帯の双方に対応する局が2局となる。これらは光変換装置とアンプの機能だけを備えた「光張り出し装置」による局であり、基地局装置そのものはダークファイバを経由して熊谷市内のオフィスビルに集中して設置してある(写真2)。
今回の800MHz帯と2.1GHz帯の比較では、上記の800MHz帯と2.1GHz帯に対応する基地局のエリアを利用して、移動走行車内に設置したUSBドングルタイプのLTE受信機を利用して、走行中のスループットの違いを実測した。
800MHz帯と2.1GHz帯の特性を完全に比較するため、アンテナの伝送パワーも極力合わせたという(写真3)。受信端末は2.1GHz対応の端末であり、走行車に設置したアンテナと周波数変換装置を用いて条件を合わせている。「周波数特性の違い以外の差は出ない条件にした」と実験を進めたソフトバンクモバイル技術統括研究本部ワイヤレスシステム研究センターの藤井輝也センター長は話す。
実際の走行試験の結果、2.1GHz帯で15Mビット/秒程度のスループットのときに、800MHz帯では25Mビット/秒程度を記録した(写真4)。同社の測定によると、2.1GHz帯に比べて、800MHz帯では1.5倍から2倍のスループット改善が得られたという(写真5)。
800MHz帯は、2.1GHz帯と比べて低い周波数帯であるため、伝搬距離が伸びても受信電力が落ちにくい特性を持つ。同社の試験によると、800MHz帯は2.1GHz帯と比べて約9dB、受信電力が高い結果となっているという。これがスループットの差になったと考えられる。