>>前回
米国の電力の実態は複雑だ。州によって微妙に制度が異なるが、ここでは、3つの大きな形態とその中間に属する形態の合わせて4つについて述べる。現状維持の「フロリダ型」、自由化に失敗した「カリフォルニア型」、中間の「マサチューセッツ型」と、一番進んだ「テキサス型」だ。これ以外にも州によって微妙に異なる形態があるが、話を簡単にするため、代表的な型のみについて説明する。
現状維持のフロリダ型
フロリダ州をはじめ、26州では電力は全く自由化されていない。これらの州では発電、送電、配電、小売りは同じ既存の電力会社によって行なわれている。現在の日本の形態とほぼ同じだ(図1)。既存の地域独占電力会社は発電、送電、配電、小売りの機能をすべて持ち、電力は自己発電と必要に応じて電力卸市場から購入する。余剰の電力は卸市場で売却することもある。電力会社は州の規制下にあるが、電力卸市場は連邦政府機関であるFERC(Federal Energy Regulatory Commission)の規制下にある。

発電と送電の所有権が同じでも、前回述べたような独立システムオペレーター(ISO)と地域送電オペレーター(RTO)が存在すれば、送電網の運営はすべての発電会社にとって平等に行なわれるため、日本で今議論されているようなレベルの発電と送電の分離は達成されている。
フロリダ州にはISOもRTOも存在しない。しかし、同じ自由化されていない州のアイオワ州は中西部ISO(MISO)が送電網の運営を行なっているので、日本で言われている発電と送電の分離は達成されていると言える。フロリダ型の自由化度は表1のようになる。
発電 | 送電 | 配電 | 小売 |
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