東日本大震災に関する記事の中で、本特集のテーマである「ネットの底力」を特に強く感じた分野がある。それは、「ネットを通じた義援金集め」である。
今回のような未曽有の大災害が起こったとき、直接大きな被害に遭わなかった地域に住む人々が、被災者および被災地を支援するためにまず何をするべきか。人によって意見は様々だろうが、一般的な支援策は「義援金や支援金を出して被災者支援に役立てること」になるだろう。
現地に送り届ける支援物資の手配から救援や医療活動、復興に必要となる資材や機材の購入など、何をするにもお金は必要になる。今後、被災者が生活を立て直すためにもお金がかかる。そうした部分には、できるだけ迅速に義援金や支援金を集めて送ることが復興をスムーズに進めることにつながるだろうし、積み上がった金額が「みんなでしっかりと支援している」という被災地に向けたメッセージにもなるはずだ。
「マッチングギフト」方式による募金が浸透
その義援金集めだが、今回の大震災では従来と大きく異なる出来事があった。それは、ネットを利用した義援金集めが大々的に行われ、大きな成果を挙げたことである。
ネットを使った義援金集めはさほど珍しいものではなくなったが、今回のネット募金は、従来と比べて規模も内容も比較にならないほど大きく変わっている。具体的にどういう変化が起こったのか、ITproのニュース記事を参照しながら見ていこう。
まず、様々なニュース記事で「マッチングギフト」というキーワードが登場した。おそらく多くの人にとって耳慣れない言葉だろう。
マッチングギフトとは、個人(自社の社員なども含む)からの寄付に対して、寄付金を受け付けた組織が一定の比率で上乗せするという寄付方式のこと。筆者が知る限り、同額を上乗せするというケースが多いようだ。
震災発生翌日の3月12日にソーシャルネットワーキングサービス「mixi」を運営するミクシィが同方式を使った義援金を募集し始めるなど、多くの企業がマッチングギフト方式による義援金集めを展開していた(関連記事:東北沖地震被災地向けの義援金、ヤフーやミクシィらネット企業が続々と受付を開始)。
義援金を寄付する個人から見れば、自分の寄付金よりも多くのお金が寄付対象組織に届くことになって単純に嬉しいだろうし、寄付を呼びかけた企業にとっても、マッチングギフト方式を採用したことでより多くの寄付金を集められれば大きな社会貢献になる。義援金集めにマッチングギフト方式を採用する企業は今後も増えそうだ。