IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ITベンダーの社内会議において
ダメな“システム屋”の会話 ダメな“システム屋”上司 「おい、分かってるんだろうな。今期は震災や原油高の影響で既存案件の収支はますます厳しくなる。コスト削減一辺倒ではダメだ。とにかく新規案件を作らなきゃならないんだぞ。おい、営業!」
営業若手 「はい・・・」
ダメ上司 「新規案件を取って来いよ。お前ら、ただ客先を回っているだけじゃないのか。何かアイデア考えてるんだろうな?」
営業若手 「はい、よく考えるようにいたします・・・」
ダメ上司 「営業だけじゃないぞ。新製品とか新サービスのアイデア、何かないのか?おい、開発!」
開発若手 「はい、よく考えるようにいたします・・・」
ダメ上司 「お前らなあ、空気読めよ、空気。今は新規案件が絶対必要なんだよ!」
営業開発 「はい・・・」
ダメ上司 「新規はな、アイデアが重要なんだよ。自由なアイデアが出てくるような雰囲気が必要なんだよ。分かっているのか?」
営業開発 「はい・・・」
ダメ上司 「ほんと、困ったもんだよ。空気が読めない連中は・・・」
営業開発 「・・・(この空気自体が、自由なアイデアが出るような空気じゃないよなあ)・・・」

ダメな理由:周囲を萎縮させるだけ

 前回(第29回)は「非常時にリーダーが動揺してはいけない」ということを指摘しました。前回に続いて、今回も“システム屋”のリーダーのあるべき振る舞いについて述べたいと思います。

 数年前「空気が読めない人」という表現が流行語になりました。その場の雰囲気に気づかない人などを非難・嘲笑する文脈で使われたようです。一方で、場の空気を読むことばかりに気を取られて個性を打ち出せない人が増えたことが、別の問題として提起されたりもしました。

 ダメな“システム屋”、ダメな上司ほど、周囲に「空気を読めよ」とよく言います。しかし、そういう自分はどれほど空気を読めているのでしょうか。経営者やプロジェクトリーダーの立場にある人は、周囲の空気を読むだけではなく、“自分が生み出す空気”を読むことが求められます。

 組織をめぐる状況には様々な局面があります。リーダーが組織の緊張を高める必要がある時、あるいは逆にリラックスさせるべき時。冷静さを取り戻させるべき時、あるいは逆に燃え立たせる必要がある時、などです。

 組織を動かすリーダーの立場にある人は、今、自分が生み出している空気を読み、その空気が目的に合っていないならば、発言や態度などを変える必要があります。

 ここで言う空気とは、周囲の人たちがみんなで作り出している空気ではありません。権力者が濃厚に生み出している空気のことです。独裁的な権力者なら「ノー」と言えない空気を生み出しているでしょうし、論理的でない権力者ならばみんなが顔色をうかがう空気を醸し出してもいるでしょう。

 1年間、コスト削減を徹底的に進めてきた経営者・プロジェクトリーダーがいきなり「さあこれからは新規事業だ」と言い出したとしたらどうでしょう。これまでに「新しいこと、無駄なことは一切やるな」といった空気が充満しているなら、新しいことに挑戦する姿勢など出て来ないものです。充満している空気を、いったん“換気”する必要があります。