IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(編集:日経情報ストラテジー

ユーザー企業が集まる異業種交流会にて
ダメな“システム屋”の会話 製造A社IT担当者 「景気が悪いので、社内では営業部門強化が最優先課題です。間接人員は削減される一方で、大変ですよ」
金融B社 「同じですね。うちでは、間接部門の人もみんな営業に借り出されています」
流通C社 「当社も同じ。営業現場が混乱しちゃって、その交通整理が大変ですよ」
製造A社 「何か情報化ツールで良いのがないかなって探しているんですが」
金融B社 「あれ、どうなんだろう。クラウド・コンピューティングで有名なあの製品。実は当社は5年前に別の高額なパッケージソフトを入れて大失敗しましてね・・・」
流通C社 「そこら辺の他社事例、詳しく知りたいですよね。あ、Dさんは専門がITでしたよね?」
ダメな“システム屋”D氏 「あ、はい。金融機関のシステム子会社で、製造業や流通業を担当しています」
製造A社 「それはいいですね。幅広い業界の情報が入りそうですね」
金融B社 「Dさんところの親会社でも当社と同じ製品を使っていると思いますが、もし差し支えなければ、効果とか教えてください。狙いは何だったんですか?」
ダメシスD氏 「はい、親会社でもB社さんと同時期に稼働しましたよ。保守・運用は続けていますが、特にユーザーからの大きな不満は聞いていませんね」
金融B社 「投資に見合った効果はあったということでしょうか?」
ダメシスD氏 「そうですね、特にトラブルもなく、みんな使っていますから」
製造A社 「製造業ってどうです?営業部門の情報化、遅れていませんか?」
ダメシスD氏 「どうでしょう、私もかかわりましたが、製造業のE社さんは営業支援システムへの大型IT投資を決断しましたよね」
製造A社 「そうそう。E社さんの課題は販売チャネル強化だと思っていたのに、どうして大型IT投資に踏み切ったんでしょうね」
ダメシスD氏 「あそこはCIO(最高情報責任者)の力が強すぎますからね」
製造A社 「それはどういうことですか?」
ダメシスD氏 「私もCIOに会いましたが、誰も彼に反論しないので決断が早かったんですよ」
流通C社 「あれ、Dさんの会社で流通業のF社さんの情報システム、やっていますよね?」
ダメシスD氏 「ええ、私の部で担当していますよ」
流通C社 「F社さんはIT活用がかなり進んでいると聞いていますが?」
ダメシスD氏 「あそこは既存システムが“スパゲッティ”状態で大変です」
流通C社 「しかしPOS(販売時点情報管理)システム分析の観点とか、見事だよなあ」
ダメシスD氏 「POSシステムは全部で100万ステップもありますからね」
A社&B社&C社 「・・・(なんか、話がかみ合わないな。この人、「こうやってます」「こうなってます」ばかりだな)・・・」

ダメな理由:「なぜ」が抜け落ちている

 前回(第24回)は“システム屋”の異動・転職について書きました。今回も“システム屋”のキャリア・能力開発について書きます。

 視野が狭くなりがちな“システム屋”にとって、異業種交流会のような機会は重要です。この原稿を書く前に、異業種の知人にちょっとした調査をかけてみました。交流会などで知り合った“システム屋”の印象を聞くためです。

 最悪の回答は、「そこに“システム屋”が出席していた記憶がない」というものでした。名簿には載っていたものの何も思い出せない。あるいは社名は覚えているが人物を思い出せない、と言うのです。

 多数派の回答は、「“システム屋”は『こうやっています』『こうなっています』という事実あるいは状況を話すばかりで、『なぜ』という洞察が浅いので話が面白くないか、会話が弾まない」というものでした。