前回説明したように、チームセールスは「見込み客作り」と「営業活動」の二つのステージに分かれる(図1)。今回は、このうちの見込み客作りの進め方を説明する。

図1●チームセールスを実践する上では、「見込み客作り」と「営業活動」を分離する必要がある
図1●チームセールスを実践する上では、「見込み客作り」と「営業活動」を分離する必要がある
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事前準備:チーム全員の共同作業

 前半の「見込み客作り」は「売らないステージ」とも言い換えられる。ここでは顧客に対するヒアリング機会の創出が最終ゴールとなる。チームで検討したヒアリング項目に基づき、顧客の潜在ニーズを引き出す機会を得るための仕組みを構築する。

 そこで最初に実施すべきは「事前準備」である。(1)顧客を取り巻く環境の理解、(2)顧客の想定課題に対するメリットの検討(利用シーンまでを詳細にイメージする)、(3)商談ステップの構築、(4)ヒアリング項目の抽出――などを実施する。

 これらの事前準備はチーム全員の共同作業として当たる。(2)~(4)はこれまで営業担当者一人ひとりの裁量に任されていた部分だが、チームセールではここもチームで共通化する。

 この事前準備はあくまでも仮説である。実際の営業活動に取りかかる前に検討するため、的外れの可能性も大いにある。それでも仮説を前提に行動し、現場で知り得た事実に基づき仮説を検証しなければ、いつまでたっても見込み客は増えない。仮説検証はチームセールス全体を貫く基本的なポリシーである。

顧客接触:セミナーや勉強会が有効

 次の「顧客接触」では、顧客とのファーストコンタクトを創出する機会を作る。連載9~10回で紹介したようにイベントやアライアンスを中心とした接触機会を作っていく。

 このステップでは売り込みの匂いを極力させないほうが結果としてうまくいく。このためイベントもセミナーや勉強会といった顧客にとって有益な情報を提供するスタイルがよい。IT業界でよくみられる商品紹介に終始するセミナーはお薦めできない。

 顧客接触のための活動は、定期的に開催するのが基本だ。一度参加した顧客がすぐに見込み客になるとは限らないので、頻繁に顧客と接触できる状態を作り続ける。セミナーや勉強会を何回か繰り返す中で、次のステップとなる「フック商品の提供」への流れを意識しつつコンテンツの中身を変えていく。

フック商品の提供:顧客と1対1の関係を築く

 「フック商品の提供」は顧客との関係性を口座開設、またはそれに近い状態まで引き上げるためのステップとなる。前の顧客接触ステップによって、商品に対する興味がわいてきた見込み客に対して、フック商品の提供(もしくは紹介)をテコに1対1の関係を築く。

 前回、フック商品は「購買頻度が高く単価の低い商品」と定義した。基本的には有料の商品として、自社との購買経験(=取引口座の開設)を積んでもらうほうが望ましい。

 だからといってそこからの利益は期待しない。フック商品を販売する目的は、あくまでも顧客と1対1の関係を構築することである。その限りにおいては「お試し版」や「体験版」といった形で、商品を無料で提供しても構わない。