前回で総括したように、企業ユーザーの選択肢になり得るFMCは、携帯電話事業者が提供する従来型の「内線ワンナンバー型FMC」と、3タイプの新型FMCに分けられる。

 新型3タイプは、多様なアイデアを生かした「アイデア型FMC」、スマートフォンをVoIP端末として使う「モバイルVoIP型FMC」、ネットワーク経由のPBX(内線電話システムを構成する交換機)と組み合わせる「クラウドPBX型FMC」だ。これら3タイプの主な違いはPBXと端末の接続形態と、PBXを自前で運用するかサービスとして利用するかである。

 今回は、内線ワンナンバー型FMCの仕組みやメリット、デメリットを説明する。

設備いらずで、品質も安定

 内線ワンナンバー型FMCは、携帯電話事業者が提供するサービスである。NTTドコモの「オフィスリンク」、KDDIの「ビジネスコールダイレクト」、ソフトバンクモバイルの「ホワイトオフィス」、ウィルコムの「W-VPN」がこのタイプに相当する。

 特徴は、通信事業者の網を使うため専用設備の敷設が不要で、全国で内線番号による通話ができる点。音声通話できる端末であれば端末の種類を選ばない。スマートフォンでも利用可能だ。

図1●内線ワンナンバー型FMCの特徴
図1●内線ワンナンバー型FMCの特徴
[画像のクリックで拡大表示]

 事業者の網を使うため、通話の安定性もある。また内線番号による通話は、携帯-携帯間、携帯-固定間を含めて定額扱いになるため、通話コスト削減も見込める(図1)。

 部署の代表固定電話に取引先から電話がかかってきたとき、担当者が外出している---。そんなケースに企業ユーザーは内線ワンナンバー型FMCのメリットを感じるだろう。内線ワンナンバー型FMCを使えば、そのまま内線番号を使って社外にいる担当者に電話を転送できる。取引先との接触の機会を逃さない体制を築ける。

 内線ワンナンバー型FMCは、オフィスの内外で内線番号による通話環境を構築したいユーザーがまず候補として考えるタイプだ。ただし、携帯電話事業者が提供するサービスであるため、利用にあたっては各回線の基本料や、拠点のPBXを事業者の網に収容するための回線費用がかかる。通話コスト削減を目指す場合は、この分の費用を相殺できるだけの規模が必要になる。少なくとも100人程度のユーザー規模が必要になるだろう。