図1●スマートフォンで利用できる新タイプのFMCが続々登場
図1●スマートフォンで利用できる新タイプのFMCが続々登場
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 企業で使う電話の分野に新風が巻き起こりつつある。スマートフォンを活用して、内線やFMCを実現するソリューションが登場してきたのだ(図1)。

 例えば、2009年10月からエス・アンド・アイ(東京都中央区)が米アップルの「iPhone」向けに提供している「uniConnect」は、電話をかけたり受けたりするダイヤラー・アプリケーションと、SIPサーバーを使って、自前でFMCを実現できるソリューション。社内外で固定のダイヤルイン番号を使った通話が可能になる。

 「(いつも持ち歩いている)携帯から、部署の固定電話の番号を使って取引先とやり取りしたい、と考える企業ユーザーは少なくない。そんなニーズに応えた製品」とエス・アンド・アイの村田良成第三事業部長は話す。さらに、ダイヤラー・アプリケーションと、iPhoneに標準搭載された通話機能を使い分ければ、企業は従業員が自分で買ったスマートフォンをビジネス用途にも使ってもらいやすくなる。ダイヤラーからの通話だけを記録して会社負担にする公私分計の運用ができるからだ。

 アイソルート(東京都新宿区)が2010年9月に発売開始した「SmartFMC」も、iPhone向けのダイヤラー・アプリケーションと、PBX(内線電話システムを構成する交換機)を連動させるソリューションだ。NECインフロンティアの中小規模向けIP電話対応PBX「UNIVERGE Aspire X」のDTMFを使うことによって、ユーザーがモバイル環境にいるときでも、固定電話番号で着信したり、内線番号による転送機能などを利用できるようにしたりする。

 これらのソリューションは、モバイル環境からの発信の一部を固定通信網経由にすることができるため、企業ユーザーは通信料の削減を見込める。内線電話を含めたトータル・ソリューションとして考えれば、まだ高価な機種が多いスマートフォンの導入コストを、通信料の削減額で相殺できるケースも少なくないはずだ。

スマートフォンがIP電話端末に早変わり

 スマートフォンをIP電話端末として手軽に利用できる環境も整ってきている。iPhoneやAndroidのアプリケーションマーケットには、有償無償を問わず数多くのSIPクライアントが登場している。これらをスマートフォンにインストールし、SIPサーバーにレジストレーション(登録)すれば、スマートフォンがIP電話端末に早変わりする。

 今から数年前に、無線LANデュアル端末を使ったNTTドコモの「PASSAGE DUPLE」のようなサービスが注目を集めた。内線機能は無線LAN経由のVoIP(Voice over IP)技術で実現していた。だが、無線LAN敷設のハードルの高さや端末バリエーションの少なさなどから、企業内線の主役に広がるまでには至らなかった。

 汎用端末であるスマートフォンを無線LANデュアル端末として使えば、こうした課題の一部を払拭できる。これまでデュアル端末を最も強く推進してきたベンダーであるNECは、「2010年後半以降、スマートフォンを無線LANデュアル端末として利用できるようにする計画」(UNIVERGEサポートセンター第一システムサポート部の嶋田健久マネージャー)という。

 ここに来て、多くのSIPクライアントは、無線LANだけでなく、3G網経由でも利用できるようになってきた。つまり、3G向けのパケット定額プランに加入していれば無料通話が可能になり、さらなる通話料削減を見込めるわけだ。

 そんな特徴を生かしたサービスも登場している。オープンソースのSIPサーバーソフト「Asterisk」を使った「クラウドPBX」というサービスを提供中のアジルネットワークス(東京都中央区)は、2010年7月にiPhone向けやAndroid端末向けのSIPクライアント・ソフトから利用できる内線サービスを開始した。

 このサービスでは、SIPクライアントである「iSip」や「Sipdroid」を使ってクラウド内のPBXに接続することで、3Gエリアのどこからでも内線通話できるようになる。同時に、社外とは固定電話番号で受発信できる。

 実際、iPhoneやAndroid端末を使って同社のサービスを一週間ほど使用してみた。現時点ではまだ3G網経由のVoIPによる通信は、音質や遅延の面で不安定だ。だが、汎用的なスマートフォンに簡単な設定をするだけで、全国が“内線エリア”になるインパクトは計り知れない。