“アップ・エコノミー”の広がりが止まらない。アップ・エコノミーのアップとは、アプリケーション・ソフトウエアのこと。アップ・エコノミーは、あるメーカーが開発した端末に対して、サードパーティがアプリケーション・ソフトウエアを開発、そのアプリの販売が自由に行われる経済活動を指す。
商品の中に占めるソフトウエア開発の比重が高まるにつれ、多くのメーカーがソフトウエアの内製化には限界があると判断。その代わりに、外部のサードパーティの力をいかに自社製品に巻き込むかに注力し始めたのである。特に、ユーザーによって好みが千差万別のアプリケーションの開発については、サードパーティのほうが感度が高く、柔軟かつ迅速に対応できるという期待がある。
アップ・エコノミーの代表的な存在が、米アップルの「App Store」だ。2011年1月22日(米国時間)には、ダウンロードされたアプリケーションの数が100億本を突破したことが発表されたばかりだ(関連記事:Appleの「App Store」、ダウンロード100億件を突破)。アップルによれば2010年だけで70億本がダウンロードされているといい、そのペースは加速する一方である。
「2011 International CES」(CES2011)でも、アップ・エコノミーの勢いを感じることができた。スマートフォンやタブレット端末などモバイル端末はもちろんのこと、テレビや自動車分野にもその適用領域が広がっている。FCC(米連邦通信委員会)のジュリアス・ジェナコウスキー委員長も、講演でアップ・エコノミーに言及。ここ数年でアプリのダウンロード市場が急拡大し、それに伴って膨大な数のベンチャー企業と雇用が生まれたとアップ・エコノミーを高く評価、歓迎する姿勢をみせた。
モバイルからテレビに広がるAndroid
アップ・エコノミーでモバイル分野に続こうとしているのが、テレビ分野である。この分野で先駆けているのが韓国サムスン電子。同社は、2010年3月にテレビ向けのアプリ市場「Samsung Apps」を開設し、サードパーティがテレビ向けアプリを開発できるようにした(写真1)。OSは自社開発したと言い、開発者はサムスンの専用サイトから専用の開発キット「Samsung TV Application SDK」をダウンロードしてアプリを開発する。
CES2011の会場では、Samsung Appsそのものを紹介したほか、テレビ向けアプリケーション・ソフトウエアのコンテスト「Free the TV 2010」の優秀作品を紹介していた(関連記事:サムスン電子、TV向けアプリコンテストの優秀作品を紹介)。Free the TV 2010は、テレビ向けアプリの充実を図るもので、コンテストが功を奏したのか、Samsung Appsには約300のアプリが登録済みで、既に150万本がダウンロードされたという。
韓国LGエレクトロニクスもサムスンに追随する。独自の「LG Apps Store」を2011年3月に開始するとし、CES2011には試作機を出展(写真2)。一方、シャープも米VUDUと組んでテレビ向けにアプリを提供していることをアピールしていた(写真3)。