アビームコンサルティング
シニアコンサルタント
菊本 善夫

 IFRS(国際会計基準)基準書(IFRS国際財務報告基準、中央経済社)の読み解き方を説明する本連載も、いよいよ最後のテーマとなります。本題に入る前に、これまでの連載をおさらいしてみましょう。

 第1回でIFRSの基本的な概念を、第2回第3回で基準書の全体的な構成を説明しました。第4回第5回では、IAS第18号「収益」を例にとって個別の基準を取り上げました。

 第5回までは、「現時点」におけるIFRS基準書の読み解き方として、あらかじめ理解しておくべきことや、基準書を読み解く際に役立つ方法などを紹介してきました。今回と次回では、これまで取り上げてこなかった基準の時間軸に焦点を当て、「変わり行くIFRS」について述べたいと思います。

IFRSは「動く標的」

 これまで取り上げてきたのは、現時点ですでに存在しているIFRSです。しかし、IFRSは決して完成型ではなく、基準の改訂作業が続いています。つまり、IFRSは「変わり行く」ものなのです。

IFRSは「動く標的」
IFRSは「動く標的」

 基準書を読む際に、IFRSは「変わり行く」ものであるという視点は欠かせません。せっかく苦労して基準を理解しても、それが将来ガラッと変わってしまうこともあり得るのです。自社の業務やシステムを基準に合うように苦労して対応させても、準拠している基準自体が変わってしまう可能性があるわけです。このため、IFRSは「ムービングターゲット(動く標的)」であるともいわれます。

 基準書を読む際は、改訂予定がある基準とそうでない基準を区別し、「目の前にあるこの基準は将来変わる可能性があるのか」を把握する必要があります。では、どの基準が改訂対象となっており、どのようなスケジュールで改訂が進められているのでしょうか。