アビームコンサルティング
シニアコンサルタント
菊本 善夫

 この連載では、会計の専門家ではない人たちにIFRS基準書(「2009国際財務報告基準IFRS」、中央経済社)を身近に感じてもらい、効率よく学んでいけるように、基準書の読み解き方の基本を説明しています。前回は基準書を読むにあたっておさえておくべき重要な概念である「実質優先」と「資産負債アプローチ」を紹介しました。

 今回と次回では、実際のIFRS基準書を開いて、基準書の中身を見ていきます。何しろ2500ページを超える分量ですから、最初から1ページずつ読んでいくのは効率的ではありません。以下の三つのステップで、IFRS基準書の概要を把握していくことにします(図1)。

図1●基準書の概要を把握するための3ステップ
図1●基準書の概要を把握するための3ステップ

●ステップ1 基準書の大枠を把握する

 最初のステップでは、基準書全体を俯瞰(ふかん)し、基準書の大枠を把握します。

 基準書に含まれているのは主に、IAS(International Accounting Standards)やIFRS(International Financial Reporting Standards)といった会計基準です。ほかに会計基準以外の文書もあります。それらを含め、基準書にどのような文書が含まれているかを概観します。

 次に、会計基準のタイトルを眺めて、どのような基準があるかを見ていきます。会計基準はさまざまなテーマ別に制定されています。どのようなテーマが対象となっているかを概観します。

●ステップ2 会計基準の構成を把握する

 次のステップでは、基準書の中心部分である会計基準に焦点を当て、会計基準の構成を把握します。

 会計基準の中心となるのは、会計処理や開示項目のルールを定める規定の部分(基準本編)です。ほかに、規定以外の内容もあります。ここでは、規定以外の部分を含め、会計基準がどのような章立てになっているかを概観します。

●ステップ3 基準本編の頻出用語を理解する

 最後のステップでは、会計基準のうち、会計処理や開示項目のルールを定める規定の部分(基準本編)を掘り下げます。

 基準本編は、論点ごとの見出しによって階層的に分類されており、見出しの下に各条文が並んでいます。ここでは、多くの基準で共通して取り扱っている論点(頻出用語)について説明します。

 ぜひ基準書を手に取って、基準書と照らし合わせながら説明をお読みください。ステップ3まで経た段階で、目を閉じて基準書の任意のページを開いてみましょう。開いたページは基準書のうち何に関する文書か、その文書の何について書かれた部分か。こうした質問にある程度答えられるようになるはずです。

 今回はステップ1について説明します。ステップ2とステップ3については次回説明します。