IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

専務に詰め寄るダメな“システム屋”=“ミスター・ドメス”
ダメな“システム屋”の会話 ダメな“システム屋” 「専務、ちょっといいですか、教えてください」
専務 「どうした、すごい剣幕で」
ダメ 「役員昇格、どうして私ではなく同期のAなんですか?」
専務 「む?そうか、それを聞きに来たか」
ダメ 「どうしても納得できません」
専務 「そうか。いや、人事の理由は口外しないことになっているのだが」
ダメ 「お願いします。理由を教えてください。これでは仕事が手に付きません」
専務 「ふむ。仕方ないな。それではヒントだけ言うとするか。口外無用だぞ」
ダメ 「はい、お願いします」
専務 「役員というのはな、勲章じゃないんだよ」
ダメ 「は?」
専務 「それまでの功績に対する勲章じゃない。もちろんご褒美でもない。そこがすごろくの上がりでもない。分かるな?」
ダメ 「・・・」
専務 「君はこれまでよくがんばってきた。実績は申し分ない」
ダメ 「はい。だからこそ納得がいきません」
専務 「しかしな、これからの会社の顔としてどうかということなんだ。ちょっと言いにくいけどな、これまでの人脈というよりも、これから作るべき人脈がどのぐらいのレベルを期待できるか、とかな」
ダメ 「は・・・い?」
専務 「当社を引っ張っていくだけじゃない。役員の立場では、情報サービス産業全体をけん引し、監督官庁や報道陣から意見を求められることもあれば、海外の同業他社と連携することだってあるだろう
ダメ 「そういったことなら、これから猛勉強します」
専務 「うーむ。あのな、これから猛勉強する人と、これまでの20年以上猛勉強してきた人のどちらが役員としてふさわしいかという問題なんだよ!」
ダメ 「・・・」

ダメな理由:ガラパゴス化しがちな日本

 前回(第14回)は、“システム屋”の仕事のためにゴルフに使いすぎるのは考えものだと指摘しました。代わりに時間を使ったほうがいいことがあるはずです。

 その1つが英語かもしれません。世界中の“システム屋”たちの中で、英語を使わずに平然としているのは、おそらく日本人だけです。あるいは、就職時点と定年退職時点の英語能力を比較して、実力が下がっていく“システム屋”は日本人だけです。

 システム技術に関する専門用語のほとんどすべてが英語であり、IT活用の先進事例もその多くが米国発です。米欧発のパッケージやソフトウエア製品などを積極的に活用したり、販売しようとしているにもかかわらず、英語によるコミュニケーションを重視しないのが、日本の“システム屋”です。

 英語が苦手というだけならまだ良いでしょう。海外や世界を視野に入れたくない、あるいは、入れるのが面倒くさい、日本語になっている情報だけで十分であると考えている、あるいは考えたい、という人が少なくありません。

 こういうことをよく“ガラパゴス”と言います。“ガラパゴス”の気候は温暖ですし、海外から競争相手が入ってこようとしても、日本語・日本文化という参入障壁が自分たちを守ってくれます。「だから安泰だ」という思考様式になってしまいがちです。

 “ミスター・ドメス”。すなわち、ドメスティック(国内専用)。こんな人を会社の顔たる役員にすれば、会社全体が国内専用になってしまいます。

 例えば、米欧から新製品・新技術が入ってきた時に、国内他社のまねをするか、報道に踊らされることになりがちです。他を知り、比較することができないので、たまたま仲が良くなった外国人や外国企業に必要以上に肩入れしがちです。こんな人が役員になれば、会社は判断を誤るでしょう。

 “ミスター・ドメス”は40歳代に入ると限界を感じます。いや、冒頭の会話のように本人は何も感じていないかもしれません。周囲が感じるのです。