ジェネクサス・ジャパン
代表取締役CEO
大脇 文雄

 GeneXus(ジェネクサス)は南米ウルグアイ生まれの業務アプリケーション開発ツールである。1989年に最初のバージョンが完成して以来、20年以上の歴史をもつ。現在、世界中で6500社以上がGeneXusを使ってシステムを開発しており、小規模の開発を含めると年間1万件以上の実績が生まれている。

 日本におけるGeneXusの知名度は必ずしも高くないが、日本での実績は近年急速に増加している(末尾の別掲記事「GeneXusの利用実績は?」を参照)。日経コンピュータやITproでも最近取り上げられた(関連記事:南米発のツールがIT業界に与えるインパクト)。一方で、「本当にプログラミングが不要なのか」「以前のCASEツールと何が違うのか」といった疑問をお持ちの方もまだ多いようだ。

 この連載では「GeneXusとは何か」のイメージをつかんでもらうことを狙いとして、その歴史から実際の開発の流れまでを説明していきたい。業務アプリケーションの開発に携わるITpro読者の皆さんに、少しでも興味を持っていただければ幸いである。

 今回は総論として、GeneXusの概要と、GeneXusが登場した背景を説明する。次回から、実際にGeneXusを使った開発の流れを紹介していきたい。

「業務の記述」から「実現方法を含む設計情報」を自動生成

 GeneXusとはどんなツールだろうか。一口に言うと、以下のようになる。

「業務の記述」から「実現方法を含む設計情報」を推論により自動的に作り出すツール

 「業務の記述」とは、経営者や現場の担当者が見ている実際の業務を記述したものをいう。業務の現場を流れる伝票や台帳、ビジネスルール、イベントなどを記述する。GeneXusでは「ユーザービュー(User View)」と呼ぶ。

 GeneXusは大きく、仕様解析機能とアプリケーション生成機能で構成される()。仕様解析機能は、入力された「業務の記述」を基に「実現方法を含む設計情報」を推論により自動的に生成する機能。アプリケーション生成機能は、仕様解析機能が生成した「実現方法を含む設計情報」を基に、利用者が希望するOSやDBMS(データベース管理システム)、言語用にアプリケーションを自動生成する機能である。

図●GeneXusの構造
図●GeneXusの構造

 二つの機能のうち、カギになるのは仕様解析機能だ。アプリケーション生成機能を備えている開発ツールはほかにもあるが、「業務の記述」から「実現方法を含む設計情報」を生成する機能を持つツールは筆者の知る限り、ほとんどない。

 しかもGeneXusでは推論機能を使って、「業務の記述」から「実現方法を含む設計情報」を自動的に生成する。これを可能にしていることは、アプリケーション開発の生産性や品質を高めるうえで大きな意味をもつと考えられる。

 通常の業務システム開発では、「業務の記述」と「実現方法を含む設計情報の記述」の割合は、おおよそ2対8である。システムの規模が大きくなると、後者が膨大になり、開発費用が膨大になるだけでなく、開発に失敗する可能性も高くなる。GeneXusにより「業務の記述」だけでアプリケーションを構築できるメリットはどれだけ大きいか、容易に想像できるのではないだろうか。

 もちろん、GeneXusはあくまでもツールであり、どのように使うかは開発者の考え方次第だ。ソースコードジェネレータとして、プログラム設計、コーディング、単体テストの効率化のために使うことも可能であり、効果もある。ただ、システム開発全体の生産性や品質を向上させるのが目的であれば、「業務の記述」から利用するほうがより効果的なのは明らかである。