IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ダメな営業担当“システム屋”がダメな報告をする会話
ダメな“システム屋”の会話 上司 「今、A社に提案している案件の状況について報告して」
ダメ営業担当“システム屋” 「はい。この案件ですが、結論から言うと提案しないほうがよいと思います」
上司 「ん、どうしてだ?」
ダメ営業 「第1にリスクが大きすぎます。顧客企業A社は、当社の競合Z社が癒着しています」
上司 「それは最初から分かっていたことだろう。それがリスクかな?」
ダメ営業 「はい、現行機能保証を要件に入れるようにZ社が顧客に吹き込んでいます」
上司 「だから、それは最初から分かっていたんじゃ?」
ダメ営業 「ドキュメント未整備で現行機能は詳細不明、さらにA社のユーザー部門(利用部門)は我々と距離を置くようなそぶりを見せています」
上司 「あれれ、先月の報告だとA社のユーザー部門は当社のことを高く評価してくれていたんじゃないのかな?」
ダメ営業 「そうでもありません。さらに、この案件をベースに製品開発するのは無理で、顧客の要件はユニークすぎますし、さらにさらに、顧客の予算は不明ですが恐らく開発コストの半分もないと思われます」
上司 「・・・(無言)」
ダメ営業 「さらに、稼働時期は硬直的で大きなリスク要素ですし、それより何より当社の開発部門は人を出せないと言っています」
上司 「ちょっと待てよ。2週間前の報告では何から何まで素晴らしい案件だと言っていたように覚えているけど、今日聞くと何から何まで最悪の案件ということか?」
ダメ営業 「はい、最悪です!」
上司 「うーん、いったいどうなっているのかな?もう少し冷静な報告はできないのかな?」
ダメ営業 「私は一生懸命やっているんですよ!昨日だって寝てないんですよ!!」
上司 「・・・(あーっ、頭痛が)」

ダメな理由:経験がプラスにならない

 前回は外から学ぼうとしない“保守本流”な人々について述べました。これは、ITベンダーやシステムインテグレーターといった“システム屋”と顧客企業との関係が既に出来上がっている場合の話です。

 今回は、新たに顧客企業との関係を作ろうという場面の話です。

 上の会話のように、システムを売り込む営業案件が「行けそうだ」という時にはバラ色の報告があり、「ダメそうだ」となると一転して最悪案件の報告となる。こんなことはないでしょうか。

 ジェットコースターのように上がったり下がったり。こういう“システム屋”はキャリアを積んでも経験したことがプラスにならずに、成長が持続しません。

 “システム屋”が新規顧客を獲得する時、多くの場合が既存の別のITベンダーからのリプレースになります。既存ベンダーは当然のように抵抗しますから、成約までに様々な障害が発生するのは当たり前です。しかし、もし獲得できれば大きな自信となります。

 さらに、顧客のシステム企画部門などが既存ベンダーと密接な関係を持っている可能性があります。このときはユーザー部門(利用部門)をターゲットとして営業活動を展開する戦術が効果的です。「利用部門に食い込んだ」という報告はアクセルになり、「利用部門が距離を置いている」という報告はブレーキになります。つまり事実はどちらであるかが、上司や関係者にとって極めて重要な判断要素となるはずです。

 営業活動の開始時点から、熱意を持って顧客に当たるのは当然です。ただし、冷静かつ客観的に事実を見る目も併せ持つべきです。そうすれば、可能性とリスクをもっと上手に表現できるはずです。逆に、“超楽観”と“超悲観”を行ったり来たりしているようだと、上司だけではなく顧客、同僚からも信頼を得ることはできません。