IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(編集:日経情報ストラテジー

若手“システム屋”とダメな先輩“システム屋”の雑談
若手“システム屋” 「A社のシステム、効果大みたいですね。業績上がってますよ」
ダメ先輩“システム屋” 「お前、分かってないなあ。いいか?あれはな、システムの効果じゃないんだよ。社員の評価基準が変わったからみんな必死になってるだけなんだよ」
若手 「でも、社員評価の数字は新システムが出しているんじゃないですか?」
ダメ先輩 「あれは単純で、紙でもできた話だな」
若手 「でもでも、端末にスマートフォンを採用して新技術にも挑戦していますよね?」
ダメ先輩 「新技術ってことはないだろ。スマートフォンはもはや新しいとは言えないだろう」
若手 「でもでもでも、開発期間が3カ月ってすごくないですか?」
ダメ先輩 「たぶんな、調査とか要件定義とかプロトタイピングとかを除いて、あとは作るだけの期間が3カ月ってことだろ。全部含めたら2年はかかっているよ。お前、分かってないなあ」
若手 「でもでもでもでも、リーダーの人が34歳って報道されていましたけど、先輩より若いですよね。これってすごくないですか?」
ダメ先輩 「お前、分かってないなあ。雑誌に載るんで、顔のいい若い人を選んだだけだろ。本当のリーダーはたぶん50歳近いんじゃないか」
若手 「・・・(この先輩と一緒にいても時間の無駄だな。なるべく話しかけないようにしようっと)・・・」

ダメな理由:他者をおとしめてどうする?

 前回は「大丈夫だな?」を繰り返すダメ上司について指摘しましたが、ダメ上司だけではなく、ダメ先輩にも注意が必要です。

 この先輩のダメな理由は、自分以外の他者の実績、能力などをこきおろす行動様式が顕著に表れていることです。他者をおとしめて何を狙おうというのでしょうか。単なるストレス発散か、あるいは他者を落とすことで自分を相対的に浮上させたいということなのでしょうか。

 2009年の総選挙で政権を失った自民党がさかんに民主党をこき下ろしています。しかし、それによって自民党が浮上するとは思えません。他者批判ばかりしている人に当事者能力があるようには見えませんから。

 批判精神を持つこと自体は悪いことではありません。特に若い人が「自分にもできるはずだ」と考えて、他者の実績を過小評価することは、ある意味で健全かもしれません。その気持ちが様々なことにチャレンジする原動力となるならばなおさらです。

 しかし比較的ベテランの“システム屋”の中には、冒頭の会話にあるように、とにかくけなすだけの人がいることも事実です。

 私が野村総合研究所(NRI)の前身の企業に入社して“システム屋”2年目だったころ、10年目ぐらいの先輩で、社内の主要人物を片っ端からこき下ろして説明してくれる人がいました。私が「あの人は業務に詳しいですね」と言えば「あいつは技術を知らない」と言うし、「あの人は仕事が早いですね」と言えば「ミスが多いからだ」と返すのです。

 結論は「全員ダメで、自分だけが優秀」ということだったのでしょう。その先輩の他者批判は、それによって自分に向かう尊敬を期待していたのだと推測しますが、私の彼を見る目は、その逆の方向に向かって行きました。

 英語にfault-finderという表現があります。アラ探しをする人、まさにそれです。ライバルに対する競争心から批判的に考えるのは健全ですが、それを後輩などに吹聴すれば自分の価値を下げることに気づいていません。