IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を厳しく指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

メな“システム屋”と司の会話
司 「明日の会議資料は何ページになったかな?」
メな“システム屋” 「はい、えーと、その、わりと多くなってしまったのですが・・・」
 「4枚ぐらい?」
 「いや、えーと、その、結構多くて、10枚は超えているはずで・・・」
 「それで、一番言いたいポイントは何枚目にしたのかな?」
 「何枚目といいますか、えーと、その、一応全部がポイントですから・・・」
 「つまり、ポイントは10以上あって、その数も定かではない、ということかな?」
 「・・・」

ダメな理由:時空間がゆがんでいる

 前回で説明したような、ITベンダーやシステムインテグレーターなどに勤務する「ダメな“システム屋”」にとって、時空間はゆがんでいます。自分に余裕がある時はゆっくり、忙しい時はハイスピードで時間が流れます。

 おそらく、単純なバグの発見に数日も費やした経験と、数分で発見できた経験の両方が、スピードが一律でないという法則として確立し、あらゆる事象に適用しているのでしょう。

 そのために、余裕がある時の会議資料のページ数の上限は「時間が許す限り」になります。今や誰もが使うようになった「パワーポイント(PowerPoint)」など、プレゼンテーションソフトを駆使するチャンスにもなります。

 大観衆の前で新製品を発表するような場では威力を発揮するパワーポイントですが、普段の会議資料作成に活用すると、とんでもないことが起きます。

 作者が満足する図柄ができ上がると、それを微妙に作り変えた図柄が何回も使われます。棒グラフが右肩上がりならば、上昇気流に乗ったような矢印で強調したりします。3つの切り口があれば、3つを並べるスライドで1枚、それぞれの説明で3枚、さらに詳細が何枚になるか分かりません。

 そもそもプレゼンテーションツールは、話し手と聞き手の間に大きな情報ギャップ、知識ギャップがある時に有効なものです。話し手の脚本通りに説明すると聞き手にわかりやすい時に効果を発揮する道具です。

 一方で、定例会議のように、参加者全員がその件についてある程度知っていて直近の状況を確認したい時や、「何が論点でどんな仮説を出すのか」を参加者が待ち望んでいる時に、プレゼンテーションツールは向いていません。分かりきったことが大きな文字で書いてあってページ数を浪費したり、単純すぎて意味がないメッセージをやたらと丁寧にイラストを交えて描いてあったりすると、聞き手は怒りすら覚えるものです。

 ダメな“システム屋”ほど、しゃれた表紙を最初に作ります。そして肝心な論点はなかなか定まりません。その結果、冒頭のような会話になってしまいます。