IT業界における今年後半の景気は、いったいどうなるのだろうか――。7月26日公開の記者の眼で、IT業界の景気動向を“現場目線”で予想してもらう読者アンケートを実施した。ITpro読者の皆さんが現場で日々感じること、例えば新規案件の受注状況やシステム開発プロジェクトの状況の変化といった現場感覚を基に、IT業界の今年後半(7~12月)の景気などを予想していただいた。その結果を報告したい。

 短期間でありながら970人という多くの方々から回答を頂戴した。自由記述欄のコメントも総じて長く、IT業界の景気動向に回答者が並々ならぬ関心を抱いていることが分かった。なお、回答者のプロフィールは、システムインテグレータ、メーカー、ディーラー、ソフト製品開発など「IT関連企業」の人が83.1%、製造、サービス、金融、流通、官公庁など「ユーザー企業」の人が11.1%、その他が5.8%だった。

「ゆるやかに回復する」との声は少なくないが…

 リーマンショックから2年近くが経過し、海外主要ITベンダーの最近の決算は好調を示している。「そろそろ国内のIT業界も長いトンネルを抜けるか?」と期待したいところである。しかし、読者の予想は割れた(図1)。

図1●今年後半、IT業界の景気はどうなると思いますか?
図1●今年後半、IT業界の景気はどうなると思いますか?

 良い材料としては、回答者の24.4%が「ゆるやかに回復する」との感触を得ているようだ。これまでIT業界全体が沈み込んでいた状況を考えれば、明るさが感じられるようになったといえるだろう。

 その半面、今年後半は「やや厳しくなる(18.8%)」「かなり厳しくなる(15.3%)」との声が合わせて34.1%となり、回復を予想する声を上回った。全体として見れば、「今年後半も厳しく、予断を許さない状況が続く」というところか。これがITpro読者の予想結果である。

 こんな状況において、IT関連企業はしっかりと方向を見定め、回復への舵取りをしているのだろうか。図2は、IT関連企業に勤める方々に「あなたの会社では、この不況を乗り越えるためのビジョンや戦略を明らかにしていますか?」と尋ねた結果である。「ビジョン/戦略がある」としているのは計56.6%。これに「ビジョン/戦略を明確にしているわけではないが、社内では進むべき方向を共有している(16.8%)」を加えると、全体の73.4%は会社・社員の進むべき方向を社内で共有しているようだ。

図2●あなたの会社では、この不況を乗り越えるためのビジョンや戦略を明らかにしていますか?
図2●あなたの会社では、この不況を乗り越えるためのビジョンや戦略を明らかにしていますか?

 ただし、「ビジョン/戦略はあるが、その有効性には疑問を感じている」という回答が全体の4割以上を占める。会社としてのビジョン/戦略があったとしても、長い不況から抜け出せていない会社が多い現実を見れば、このような意見が多いのもうなずける。IT関連企業のトップは、こうした現場の不信感を解消すべく、きちんと対応する必要があるだろう。