第1回に続き、iアプリの動作環境となるJavaのプロファイル(ある特定の動作環境に合わせたJavaの機能セット)の発展とそれらの特長を解説していこう。

DoJa-3.5――mova対応が終了し、FOMAだけが対象に

 2004年、DoJa-3.5を搭載した「900i」シリーズが発売された。DoJa-3.5では、アプリケーションのサイズが100Kバイト、スクラッチパッドは400Kバイトとなり、DoJa-3.0よりかなりサイズの大きなiアプリの開発が可能となった。DoJa-3.5はmovaには対応せずFOMAのみとなり、より速い通信とより大きなコンテンツを扱うことを前提に作られた。

 このDoJa-3.5とFOMAの通信との組み合わせによって新たな携帯電話のソリューションビジネスが加速したのもこの頃である。アプリ単体ではなく、サーバー側のシステムとの連携が進んだ。

 DoJa-3.5には、DoJa-2.5OE(Overseas Edition)というバージョンも存在する。このバージョンは、国外のiモードサービス向けに、DoJa-3.5の一部機能を削除したバージョンである。赤外線リモコン機能や、iアプリDXに関する機能は全て削除されている。一部基本機能がオプション機能扱いになっている。

DoJa-4.0――ハイエンドとライトユースに分かれる

 2005年、DoJa-4.0を搭載した「901i」シリーズ、DoJa-4.0LEを搭載した「700i」シリーズが発売された。DoJa-4.0では、DoJa-4.0とDoJa-4.0LEという二つのバージョンが作られ、よりライトユースな携帯電話向けには機能が限定されたDoJa-4.0LE、ハイエンド向けには通常のDoJa-4.0が採用された。

 DoJa-4.0から、JavaのベースとなっているCLDCが1.0から1.1にバージョンアップされ、浮動小数点演算などの機能が使えるようになった。DoJa-4.0では、3Dグラフィックスや3DサウンドAPIなどが追加された。

 2006年にはDoJa-4.1を搭載した「902i」シリーズが発売された。DoJa-4.1では、PKI(公開鍵暗号基盤)を使ったFOMAの電子認証サービスであるFirstPassサービスを利用したデジタル署名APIなどが追加された。

DoJa-5.x――アプリ+スクラッチパッドのサイズが1Mバイトに

 2007年、DoJa-5.0を搭載した「903i」シリーズが発売された。DoJa-5.0では、アプリのサイズとスクラッチパッドのサイズの合計が1Mバイトまでという仕様となった。そのため「メガアプリ」と呼ぶ大容量のiアプリが出現した。DoJa-5.0は、「904i」シリーズでもそのまま使われた。

 2008年にはDoJa-5.1を搭載した「905i」シリーズが発売された。DoJa-5.1では赤外線通信のうち、従来の4倍~10倍程度の転送速度を実現可能な赤外線通信プロトコルである「IrSimple」への対応が追加された。DoJa-5.xは、DoJaの集大成ともいえるプラットフォームで、メガアプリを活用した今までになかった規模のゲームアプリやソリューションアプリが数多くリリースされた。

Star――iアプリに一大変化、iウィジェット機能が登場

 2008年、iアプリに大きな変化が起きた。従来のDoJaプラットフォームに代わる新たなプラットフォームとして、Starプラットフォームを搭載した「A」シリーズが発売された。Starの大きな特長は、複数のiアプリを同時実行できるようにする仕組みが追加された点である。iウィジェットと呼ばれる機能がそれで、複数のミニアプリ(実体はiアプリ)がWidgetViewと呼ばれる専用のモードで同時に動くようになった。

 従来のHTTP通信に加えて、「iアプリオンライン」と呼ばれるTCP/IPによるリアルタイム通信にも対応した。「iアプリコール」と呼ばれる、利用中のiアプリから手軽に複数人の呼び出しを行える機能も追加された。アプリサイズは、スクラッチパッドサイズと合わせて2MBまで拡張された。

 Starプラットフォームは、2008年秋にStar-1.0、2009年春に大容量フル楽曲保存などに対応したStar-1.1、2009年秋にマルチリンガル文字入力モードなどに対応したStar-1.2、2010年春にStar-1.3として機能拡張が続いている。Starプラットフォームは、DoJaプラットフォームとは互換性がないので注意が必要である。ただし、当面は移行期間を考慮し、DoJaプラットフォームも引き続き携帯電話に搭載されており、どちらのプラットフォームでも動作するようになっている。にはiアプリプラットフォームとNTTドコモの携帯電話の変遷を示した。

図●iアプリの歴史
図●iアプリの歴史
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