最近、日本の携帯電話市場にある変化が起き始めている。iPhoneやAndroidに代表されるスマートフォンがシェアを拡大し始めている。一方、従来の日本の携帯電話は、メディアで「ガラケー」と呼ばれ、ややネガティブに扱われつつある。

「ガラケー」と呼ばれて

 日本の携帯電話の進化は、確かに携帯キャリアのサービスや、社会インフラと連動した日本独自の進化だといわれる。だが、その進化の過程で実装された仕組みは、携帯電話の世界最先端を行く、決して過去形ではなく現在進行形の、世界中からうらやまれる未来の「携帯電話」の姿そのものである。

 スマートフォンは、今までの携帯電話にはないタッチパネルを生かした斬新なユーザーインタフェースなど、注目されている機能が多いが、一方で「ガラケー」なしでは生活できないくらい身近なものになっているユーザーもたくさんいる。その機能や仕組みを支えているものの一つが、携帯電話で動作している「携帯電話アプリ」である。

 携帯電話アプリといっても、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルがそれぞれ異なったプラットフォームを用意して、独自のサービスとして拡張し続けている。本連載では、そのなかでも携帯電話アプリで常に業界をリードし続けているNTTドコモの「iアプリ」に注目し、iアプリのこれまでを振り返る。それと同時にスマートフォンがシェアを拡大している今だからこそ、iアプリの開発方法、配布方法や機能の紹介を通じて、その可能性を開発者向けに紹介する。

iアプリの動作環境とその主な特長

 iアプリとは、NTTドコモが提供している携帯電話向けアプリケーションサービスの名称であり、アプリケーションそのものの総称でもある。現在、NTTドコモが発売するほとんどの携帯電話(スマートフォンは含まない)でiアプリが動作する。iアプリは、DoJa(ドゥージャ)とStar(スター)というJavaのプロファイル(ある特定の動作環境に合わせたJavaの機能セット)上で動作するJavaアプリケーションである。

 Javaといえば米Sun Microsystemsが開発したプログラミング言語およびアプリケーション実行環境の総称である。iアプリはJavaの中でも携帯端末向けのプラットフォームであるJava2 Micro Edition(J2ME)を使う。このJ2ME上に、メモリー容量が少なかったり、CPU速度が遅かったり、常時ネットワークにつながっていないような端末でも動作するように設計されたCLDC(Connected Limited Device Configuration)と呼ばれるコンフィギュレーション(実行想定環境)が用意されており、DoJaやStarはその上で動作する追加モジュール的な存在である(図1)。

iアプリのアーキテクチャー
図1●iアプリのアーキテクチャー

iアプリの主な特長は、以下の通りである。

・Javaでプログラミングできる。
・Webサーバーがあれば自由に配布できる。
・ダウンロードしたサーバーと通信ができる。
・ローカルのデータ保存領域が使える
・開発ツール、仕様が公開されている。

 一方、iアプリには端末本体の機能と密に連動でき、携帯電話の個人情報や機密性の高い機能を使うことができる「iアプリDX(デラックス)」というカテゴリーも存在する。こちらの仕様は一般には公開されておらず、NTTドコモに申請をして許可された業者だけがその開発および配信をすることができる。