写真1●CATVユニバーサルポータル
写真1●CATVユニバーサルポータル
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 パナソニックは、6月24日から26日に開催された「ケーブルテレビショー2010」において、双方向技術を活用した多機能テレビポータル技術のデモ展示を行った。この多機能テレビポータル技術は、既報の通り、大手ケーブルテレビ事業者のイッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)において、2010年4月15日から実証実験が行われている。また、同社が6月1日に受注を開始したケーブルテレビ局向けサービスプラットフォーム「CATVユニバーサルポータル」に、この多機能テレビポータル技術が活用されている。同社が提案するテレビポータル技術で注目する点は、北米で展開する同社のインターネットテレビサービス「VIERA CAST」で採用しているJavaScript/Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)とOpenGLを利用していることである。今回は、このパナソニックが提案するテレビポータル技術を取り上げる(写真1)。

写真2●トップ画面
写真2●トップ画面
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 テレビポータル技術を活用した「CATVユニバーサルポータル」は、ケーブルテレビ網の持つ双方向ネットワーク機能を活用した様々なサービスアプリケーションの開発を可能にするサービスプラットフォームと位置づける。「ポータルサーバー」と、テレビポータル技術が組み込まれた「ポータルプレーヤーソフトを搭載するセットトップ・ボックス(STB)」から構成される。ケーブルテレビ局が提供する多チャンネル放送やVODといったサービス以外に、ケーブルテレビ網の双方向機能を活かして、地域情報やお勧めコンテンツを提供する「お勧め番組ナビ」を提供できる。視聴者の嗜好に応じた番組を加入世帯それぞれの専用ポータル「個人別TOP画面」から提供するといった展開も可能にする。

 データ放送は自主放送チャンネルを視聴している時にのみしか表示することができない。このポータルプレーヤーはどのチャンネルを視聴していても、リモコンのメニューボタンを押せば表示することができる(写真2)。

HTMLブラウザを使わずAjaxエンジンをOSの上に搭載

 テレビポータル技術では、アニメーションによるデザイン性を高めたGUI(グラフィカル・ユーザーインタフェース)を提供でき、動的なメニュー表示やスムーズな画面切り替えなど軽快な操作性を実現している。

図1●CATVユニバーサルポータルシステム
図1●CATVユニバーサルポータルシステム
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 通常、日本仕様のデジタルテレビやSTBでの双方向アプリケーションには、デジタル放送で利用しているデータ放送記述言語であるBMLやアクトビラ、J:COMオンデマンドで利用されているIPTVフォーラムが策定したHTMLブラウザ、または組込み機器用にカスタマイズされたHTMLブラウザを利用する。しかし、CPU性能や搭載するメモリ容量などの制約により、パソコンと比較すると描画速度が遅く、操作性や表現力に優れたユーザーインタフェースを持った画面は作りにくい。また、コンテンツを制作するにも制限が多く、3Dグラフィックなどを用いた高度なアニメーションは扱いにくく、JavaScriptの一部機能やAjaxが利用できないという課題もある。

 そこで、これらの課題を解決し「お年寄りでも子供でも簡単に素早く操作ができるようにする(説明員)」ために、同社のテレビポータル技術では、BMLブラウザやHTMLブラウザは利用せず、OS/ドライバの上に直接3Dグラフィックス用プログラムインタフェースであるOpenGLをサポートしたJavaScript/Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)エンジンを搭載することで、動的なメニュー表示やスムーズな画面切り替えなど軽快な操作性を実現している(図1)。

STBの内部コマンドを呼び出せるAPIを追加

 リモコンのメニューボタンを押して表示されるSTBのトップ画面は、JavaScriptファイルで作成された画面レイアウトファイルと画像データで構成されている。このトップ画面は、加入世帯の利用者毎にカスタマイズすることが可能で、家族内で、あるいは各個人で異なるメニューを用意することがきる。そして、ケーブルテレビ加入時にセンターへ登録したSTBの機器IDと利用者IDを利用することで加入者宅を特定し、ポータルサーバーから取得して表示している。

 このテレビポータル技術で提供する機能の一つである「お勧め番組ナビ」は、番組情報のメタデータと利用者毎の属性や嗜好、STB毎の視聴履歴、録画履歴を元に番組をレコメンドする。レコメンド番組を自動録画するのが「おまかせ自動録画」である。お勧め番組ナビは、ケーブルテレビ局が提供する多チャンネル放送のお勧めチャンネルや地上デジタル放送/BSデジタル放送の放送チャンネルへのダイレクト選局、お勧め番組情報からの録画予約、おまかせ自動録画などの機能が利用できる。ただし、通常のJavaScriptではSTBを直接制御する事はできないため、「JavaScriptの関数を拡張し、JavaScriptから直接STBの内部コマンドを呼び出せるAPIを追加することで実現している」(説明員)という。

民生用デジタルテレビ向けサービスとしても期待

 この他、JavaScriptを使ったH.264/AVCのIPストリーミング動画再生にも対応しており、ポータル画面上にお勧め番組などの番組メタデータに連動する予告編・番組紹介など映像コンテンツ提供が可能である。また、ポータル画面から「お勧めVOD」として、番組・映画などのVOD番組を簡単に視聴することができる。ただし、現在の仕様では、VODサービスで利用されているDRM機能(MarlinやMicrosoft DRMなど)には対応していない。サービスを展開したい事業者が出てきた場合には、DRM機能の追加は可能という。

 さらに、VODではなく、自治体と連携した地域情報や防災関係情報として、定点カメラ映像や各種防災の映像ライブラリのストリーミング配信など、ケーブルテレビならではのサービス展開にも期待できる。なお、現在発売している最新版のケーブルテレビ向けSTBの「TZ-DW600」や「TZ-DW900」は、このテレビポータル機能を持ったポータブルプレーヤー機能を追加のソフトライセンスにより搭載が可能になるという。

 このように、テレビポータル技術に、JavaScriptを利用することで、操作性や表現力に優れたユーザーインタフェース/ナビゲーションをユーザーへ提供することができる。このJavaScriptとOpneGLによる3Dグラフィックスを使ったユーザーインタフェースは、既に北米で展開中のVIERA CASTで利用されており、「地域のお天気情報」や「株価情報」、オープンインターネットで提供されているVODサービス(Amazon Video On DemandやYouTube)も提供している。つまり、データ放送を利用せずに、Webサイトとして提供している地域情報や自治体情報、広告、天気・交通情報などの身近な情報を容易に提供することができることは、インターネットサービスプロバイダーにとっても、デジタルテレビ向けサービスに参入しやすくなる。