有限責任監査法人トーマツ
エンタープライズリスクサービス部 シニアマネジャー
後藤 剛

 IFRS(国際会計基準)が有形固定資産プロセスに与える影響に関して、前回と今回では「借入費用の資産化」と「資産除去債務」を取り上げている。前回は、IFRSと日本の会計基準の差異と、IFRSの導入が業務に与える主な影響を解説した。

 今回は前回の内容を踏まえた上で、実際に業務プロセスを変更または新規に構築する際の実務対応上のポイント(勘所)を見ていく。

借入費用の資産化

判定フローの構築

 資産化が求められるのは、資産化適格借入費用である。資産化適格借入費用は前回説明したように、適格資産の取得などに直接起因する借入費用をいう。

資産化するかどうかを判定するためにはまず、取得した資産に対してIAS第23号を適用する必要があるかを調べる必要がある。その際は、 IAS第23号の4項や7項などを考慮しつつ、各項のポイントとなる事項を判定フローとして取りまとめることになる。

 判定ポイントとして、少なくとも以下のAからDを織り込む必要がある。

A) 金融資産、あるいは短期間で製造または生産される棚卸資産か
B) 取得時点において意図した使用または販売が可能な状態にある資産か
C) 公正価値で測定される適格資産か
D) 繰り返し大量に製造または生産される棚卸資産か

 判定フローの例を図1に示す。

図1●判定フロー
図1●判定フロー

 すべての資産について、取得時にこうした判定フローを適用するのは、実務上は非現実的である。資産の種類や重要性に応じて、ある条件を満たす、あるいは満たさない資産は判定フローに乗せない、といったルールをあらかじめ検討しておくことが肝要だ。

 例えば、「購入した商品(棚卸資産)や金融資産などは判定フローに乗せない」「100万円未満の資産は判定フローに乗せない」といったような判定を実施しない」という対応が考えられる。 これらのポイントに留意した上で、自社に合った判定フローを構築することが重要になると思われる。