有限責任監査法人トーマツ
エンタープライズリスクサービス部 シニアマネジャー
後藤 剛

 前回はIFRS(国際会計基準)が有形固定資産プロセスに与える影響に関して、コンポーネント・アプローチを中心に解説したが、IFRSの導入による影響はこれだけにとどまらない。今回と次回では「借入費用の資産化」と「資産除去債務」にかかわる影響を取り上げる。

 固定資産プロセスは、取得、減価償却、減損、除売却にかかわる一連の業務プロセスとしてとらえることができる。会計的な視点からは、この一連のプロセスは(1)当初認識・測定、(2)減価償却、(3)事後測定、(4)認識の中止---とみることができる。

 IFRSでは、(1)から(4)までの各ステップで必要となる会計処理の原則を規定している。日本基準と比べると、その内容の一部に差異が存在する。主なものとしては、「管理単位が細かくなる」「固定資産として計上する支出の範囲が広くなる」「取得した後の処理の方法が変わる」などが挙げられる。

 これらの差異が企業にもたらす影響を一口に言えば、「管理が煩雑になる」となる。場合によっては「固定資産管理担当者を増やす」「システムを改修する」といった対応が必要になる可能性もある。

 今回と次回で取り上げる「借入費用の資産化」と「資産除去債務」は、固定資産の当初認識に関連するトピックの中でも、特にインパクトがあると考えられる(図1)。今回はIFRSと日本の会計基準の主な相違点や、業務プロセスおよび内部統制に与える影響について解説したい。

図1●固定資産の主なトピック
図1●固定資産の主なトピック

IFRSと日本の会計基準の相違点

 固定資産の当初認識・測定に関連した、IFRSと日本の会計基準の主な相違点は図2に示す。IFRSの適用により、どの項目も資産として認識する範囲が広くなる可能性があることがお分かりになると思う。

図2●IFRSと日本の会計基準との主な相違点と業務に与える影響
図2●IFRSと日本の会計基準との主な相違点と業務に与える影響
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