1960 年生まれ、独身フリー・プログラマの生態とは? 日経ソフトウエアの人気連載「フリー・プログラマの華麗な生活」からより抜きの記事をお送りします。2001年上旬の連載開始当初から、現在に至るまでの生活を振り返って、順次公開していく予定です。プログラミングに興味がある人もない人も、フリー・プログラマを目指している人もそうでない人も、“華麗”とはほど遠い、フリー・プログラマの生活をちょっと覗いてみませんか。
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 久しぶりに携帯サイト開発の依頼が来た。携帯サイトを開発するにあたって,まず確認することがある。携帯キャリア事業者(略して,キャリア)に認定登録されるサイトかどうかである。前者を「公式サイト」,後者すなわち非公式サイトのことを俗に「勝手サイト」と呼ぶ。今回の案件は勝手サイトの開発である。

 公式サイトを運営するには,まずキャリアに登録申請を出してパスしなくてはならない。そのためにはサイトの企画書を書いて提出し,審査を受ける必要がある。経験がないので詳細はわからないが,運営者にとって,これがなかなか大変なのだそうである。面倒なのは申請だけではない。開発者にも難関がある。サービス開始前にキャリアのサイト審査をパスする必要があるのだ。これを俗にキャリア・チェックと呼ぶ。ここで問題があると,一定期間内に修正するか,さもなければ後日再度キャリア・チェックとなる。

 審査もチェックも随時やっているわけではないし,キャリアもたくさんのサイト案件を抱えているわけだから,一度通らなければ最悪1カ月単位でサービス開始が先延ばしになる。ボーナスや年末商戦,学生の夏休み,大型連休などのタイミングを狙ってサービスを開始して売り上げを見込もうとしている場合などは,死活問題である。だからキャリア・チェックでNGが出ようものなら開発者は大慌てで修正するはめになる。

 どんなチェックを行うかは,事前にキャリアから一覧表が送られてくる。ただ,チェックをするのは人間なので,思わぬ落とし穴を指摘されたり,文言やレイアウト上の問題を指導されたりすることもある。ある程度の範囲で例外的な操作をして,システムのエラー・メッセージが画面に出るようでは通らないと思ってよい。サイトが対応していない機種なら,非対応機種である旨の画面を(もちろんどの機種でも正常に表示できるような方法で)表示して,必要があれば速やかにサイト登録を解除できるようにしておかなくてはならない。

 このようなポイントがいくつかあって,意識しながら設計開発していく必要がある。公式サイトをいくつか手がけた経験があれば,どの辺りをチェックされるか,どういう点に厳しくて,どこまでが許容範囲なのかを把握しているので,本質的でない部分に余計な工数をかけずに済む。しかし,未経験の技術者にとっては負担の多い仕事だろう。

 さて,これだけ苦労して公式サイトにするメリットは何だろう。一つは,キャリアが代金の回収代行をしてくれること,もう一つはキャリアが運営するサイトに掲載されるので,不特定多数の利用者からのアクセスが見込めること,というのが即座に思い付くメリットだ。サイト登録の月会費や,ダウンロード単位で発生する少額課金まで,サービス運営者が独自に回収するというのは大変面倒なことに違いない。利用者も二の足を踏むだろうし,支払わなければ携帯が止まってしまうので,踏み倒しのリスクも一定のレベル以下に抑えられるはずである。キャリアがサイトを紹介してくれるというのも心強い。

 ここまで書いた以外に,サービスの事情というのがある。