Google Appsを企業向けに使いやすくする手法は、前回で紹介した例のほかにもまだある。Google Appsは、そのままの状態では使い勝手が悪いという声もある。そこで多くのベンダーが、Google Appsを企業にとって使いやすく調整する仕組みを提供しているのだ。
使い勝手を日本風に変える
具体的には、Google Apps上のデータを共有するメンバー間で見やすいように表示するアプリケーションやテンプレートなどだ(図1)。
「例えば、縦軸が従業員名で横軸が日付になっている部署内の共有カレンダーなどはあまり欧米では見かけません。ああいった日本人に見やすい表示をするための仕掛けが拡張アプリケーションやテンプレートと呼ばれるものです」(サイオステクノロジー国内事業ユニットの中田寿穂ITインフラソリューション部長)。
例えばベイテックシステムズでは、同社のGoogle Apps導入支援ソリューションを利用する企業に対してテンプレートを無償で提供している。Google Appsを導入する場合は、こうしたアプリケーションやテンプレートにも注目したい。
ここまではGoogle Appsを企業が使う際に、それを補強する仕組みやサービスを見てきた。だが、オフィス機器からクラウドサービスを使うといった新しい用途にもGoogle Appsは使われ始めている。
複合機がAppsの機能を使う
リコーが提供する「App2Me(アップトゥミー)」は、複合機とGoogle Appsなどのクラウドサービスを連携するソリューションである。リコーの複合機でスキャンしたデータをGoogle Appsで処理させることができる(図2)。App2Meを構成するのは、「App2Me対応の複合機」「パソコン」、そしてGoogle Appsだ。
複合機には「App2Me Provider」というソフトウエアを、パソコンには「App2Me Manager」というソフトウエアをインストールしておく。これらのソフトウエアはリコーが提供する。さらにパソコンでは「Googleデスクトップ」を動作させ、その上にGoogle Appsでどのような処理をさせるかを指示するためのガジェットを動かしておく。Googleデスクトップはパソコン上にあるファイルを検索するアプリケーションだが、ガジェットを動作させるためのエンジン機能も持っている。
図2は、複合機で紙の稟議書(りんぎしょ)をスキャンしてデータ化し、稟議を審査する上司に回すワークフローを例に、App2Meのプロセスを説明したものだ。
まず複合機のApp2Me Providerで社内LAN上の自分のパソコンを指定し、自分のパソコンにインストールしてあるガジェットを指定する。ガジェットには、Google Appsでどのような処理をさせるかの指示が書かれている。ここでは、「稟議書をスキャンしてGoogle Apps上にデータとして保管し、稟議の審査をする上司に向けて審査依頼のメールをGmailで送る」という指示が書かれたガジェットAを選択している(図2の1)。
紙の稟議書を複合機でスキャンする(図2の2)と、スキャンされたデータがパソコン上のガジェットAに送信される(図2の3)。ガジェットAは自身のプログラムに指定されているGoogle Appsのアプリケーションにスキャンデータを送る。ここでは、「スキャンしたデータをGoogle Appsに保存」して、「Gmailでその保管先のリンクを含んだメールを上司に送る」(図2の4と5)。上司に稟議書のスキャンデータの保管場所を示したメールが届けば、処理は完了だ(図2の6)。
要は、複合機とパソコンがApp2Meのソフトで通信してユーザーのデータをやりとりし、パソコンのGoogleデスクトップ上のガジェットを介してGoogle Appsにデータを送る仕組みだ。送られたデータはGoogle Appsで処理され、その結果がオフィスに送り返される。
App2Meでは、Google Appsで処理したい内容ごとにガジェットを作り、Googleデスクトップ上に複数置くことができる。またGoogle Apps以外のクラウドサービスにも対応予定であり、様々なガジェットが出てくる可能性がある。