当研究所では、グローバリゼーションをキーワードに、これからの企業基盤を考えています。第11回第12回では、IT部門のための可視化指標となる五つのKPIのうち、「品質」と「生産性」について説明しました。今回は、両者に並んで重要な指標である「サイクルタイム」について説明します。

 みなさん、明けましておめでとうございます。2010年も皆さんと一緒に色々なテーマについて議論できればと思っています。当研究所に対するご意見やご質問を編集部までお寄せ下さい。そこから発生する多岐のテーマやご要望を基に、インタラクティブにIT全般について意見を交換できればと思います。

サービスの開始・終了はどこが基準か

 第11回第12回では、IT部門のための可視化指標となる五つのKPIのうち、「品質」と「生産性」について説明しました。両KPIによってIT部門は、品質と生産性のバランスを考えながら、パートナー企業とともにIT部門のパフォーマンスを阻害する課題の恒常的な改善に取り組めば、新たな展望が開けることでしょう。

 今回取り上げる指標は、「サイクルタイム」です(図1)。簡単にいえば、社内顧客からの依頼を受けてからサービスの提供を終了するまでの時間・期間だと定義できます。ここで注意すべきは、すべての可視化指標は、サービス部門としてサービスを提供する側からみた「サービス向上」を目的にしていますので、あくまでも「社内顧客の視点」で考えることです。

図1●IT部門における管理指標となる五つのKPIの例
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 具体例を挙げましょう。IT部門では通常、「サービス依頼」を社内顧客から受け取った場合、社内顧客が「サービス依頼」を起票した日ではなく、そのサービス依頼をIT部門が処理した日からサービス提供の“ストップウォッチ”をスタートさせます。同様に「サービス提供終了日」は、社内顧客にサービスを提供し終わった日、つまりIT部門の手が離れた日で、ここでストップウォッチを止めます。

 みなさんの会社のIT部門でも、上記のような基準点に何の疑問も持たず納期を算出しているのではないでしょうか?

 このプロセスを、社内顧客の視点で考えてみてください。社内顧客にとって、ストップウォッチのスタート時点は、IT部門が「依頼を処理した日」ではなく、「依頼起票日」です。「サービス提供終了日」も、IT部門の手が離れた日ではなく、「社内顧客の検収終了日(UAT終了日)」なのです。