当研究所では、グローバリゼーションをキーワードに、これからの企業基盤を考えています。第11回では、IT部門のパフォーマンスに関する可視化指標が身近な数字から導き出せることを中心に説明しました。今回は、IT部門における生産性の考え方について説明します。

 前回お話ししたIT部門のパフォーマンスに関する可視化指標においては、ITサービスの「品質」の可視化に焦点を当て、具体例を挙げながら説明しました。みなさんが通常実施している、IT部門内でのテストや客先での検収段階において、不良・不具合の記録を取り、サービスカタログに連動する各サービスのVAT(付加価値ポイント)を基に、不具合・不良や遅延を、対象期間VAPに「マイナス」計上し、実質VAPを導き出す方法です。

 品質に係る可視化指標については、その例をグラフを使って説明しました。それ以外にも、さまざまな角度から品質を定義できることに触れました。

 さて、今回はIT部門の五つの2番目、「生産性」について説明します。前回にも掲示しましたが、今回も図1を参考にしてください。

図1●IT部門における管理指標となる五つのKPIの例
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生産性と品質は背反関係にある

 最初に、生産性を定義しましょう。IT部門における生産性とは、「付加価値のあるサービスをより多く、より高品質に効果的に提供できたかどうか」ということです。つまり、サービスの質を保ちながら、例えば、「前月より、より多くサービスを提供できたか?」を計る指標です。

 第11回でも少し触れましたが、生産性と品質は「背反する」関係にあるといっても過言ではありません。一般に、品質のみを追求しようとすれば、プロセス内の品質チェックを増やすことで、品質が良くなる可能性を担保できます。しかし、品質チェックのプロセスを増やすことは、サービス提供までの工程が増えるわけですから、「生産性」を犠牲にすることになります。このように、品質と生産性は、背反する関係にあります。

 さらに、品質を担保するために品質チェックを増やせば、IT部門が提供するサービスを社内顧客にデリバリーするまでの時間も長くなります。つまり、3番目の指標であるサイクルタイムも長くなります。