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プロ野球観戦の楽しみ方を深く知り、モデル化する方法論「CCE」

委員 持丸正明(産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター 副センター長)

2009/12/24

顧客の楽しみ方を深く知るための方法論

 今回も、筆者らが実施しているサービス工学技術の研究開発事例を基に、生活者起点のサービス・イノベーションを考えていきたい。ちょうど、矢田勝俊委員から「パ・リーグにおけるサービス・イノベーション」の話題提供があったところでもあり、今回は、同じパ・リーグのプロ野球ビジネスを例にして、球場に来てプロ野球を楽しんでいる顧客(観客)を深く理解し、それをモデル化する技術について話題提供したい。連携の相手先は、北海道日本ハムファイターズである。

 矢田委員の記事にある通り、パ・リーグは、ファンや地域に軸足を置いた経営にシフトしている球団が多い。CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)基盤を構築し、チームへのロイヤリティーを強化したり、野球だけに頼らない集客戦略を考案したりする取り組みが実施されている。これらの先端的な経営の取り組みについては、矢田委員の記事(「パ・リーグにおけるサービス・イノベーションが野球ビジネスを変える」)を参照いただきたい。

 今回は、このようなCRMを構築するに当たり、顧客が球場に来て何を楽しんでいるのか、そのような顧客がロイヤリティーの高いリピーターに遷移していくにはどのようなプロセスがあるのか、を深く理解するための認知行動学的な手法を紹介したい。

 CRM基盤を設計するには、顧客の行動要因を知る必要がある。来場データやグッズの購買履歴データなどをマイニングして、その結果を顧客接点に近い職員らとともに解釈して、顧客行動要因に関する仮説を構築していくというのが典型的な手段だ。

 ただ、来場データやグッズの購買履歴データなどに表れないような顧客行動要因は見いだしにくいし、何より顧客自身を含まない客観的観察者だけで生み出す仮説には限界がある。顧客の典型的な特性(最も多く観察される行動要因)は、これらの方法で、ある程度、仮説を構築できる。しかし、もう少し特異な(少数派の)行動要因になると、なかなか見いだすことができないのが実状だ。

 産総研では、顧客が自らとった行動に関するインタビューを実施して、顧客の行動要因を深く理解する方法論を研究している。認知行動学的なインタビュー方法としてCCE(Cognitive Chrono-Ethnography)と命名し、その方法論の確立に向けて理論的研究と実証研究を進めている。

 CCEは基本的には、インタビューに基づいて顧客の行動要因を聞き出す方法であり、(1)エリートモニターの選定、(2)行動観測、(3)情報提示を伴う回顧インタビュー、(4)顧客の行動変容モデル構築、というステップで構成される。以下、ファイターズの事例を取り上げながら、手続きを順に紹介する。

エリートモニターの選定

 インタビューという方法論の性質上、あまり大量のデータを収集することができない。少数のモニターで顧客の多様性を効果的にカバーする手段が必要となる。また、モニターの表現能力も必要であり、これらの要件を備えたモニターをエリートモニターと呼んでいる。

 ファイターズの事例では、ファンクラブメンバー3000人に対して、野球に対する嗜好(しこう)、球場観戦経験、球団や球場の魅力に関するウェブアンケートを実施した。この集計結果をクラスター分析し、各クラスターを代表し、札幌在住などの条件を満足する30人のモニター候補者を選定した。選定されたモニター候補者は、図1のようにマッピングされた。

図1●エリートモニター
[画像のクリックで拡大表示]

 この30人を6人×5グループに分けてグループインタビューし、調査への意識やモニターとしての表現能力をチェックし、最終的に9人のエリートモニターを絞り込んだ。

>>行動観測と呈示情報を伴う回顧インタビュー
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