「プロジェクトの目標がぼやけている」「会議で延々と議論する割には結論が出ない」――。こんな症状を解消するために、当研究所では、ファシリテーション・テクニックを研究し、現場で培った数々のテクニック/ノウハウの中から、即効性があるツールを紹介していきます。今回は、第1回で紹介した「イエローフラッグ」の具体的な使い方を紹介しましょう。

 第1回では、イエローフラッグとは何か、そしてメンバーが問題や遅れを抱え込む原因を見てきました。今回は、イエローフラッグが自然と挙がるチームにするためには、どうすればよいのか。その具体的な方法を、メンバーの視点とリーダーの視点とに分けて紹介します。

まずは自分の生産性を知ることから

 最初は、メンバー視点によるイエローフラッグの挙げ方からです。

「進捗はどう?」
「順調です」
「何%終わってる?」
「半分くらい終わりました」
「えっ。でももう15時だよ。これ今日中じゃなかったっけ?」
「そうです」
「今日中に終わるの?」
「終わると思ってるんですが・・・。でも言われてみれば、18時までにはできないかもしれません」

 こんな会話、したことありませんか?第1回でも触れたように、作業がこれといった引っかかりもなく進んでいるときは、進捗の遅れを自覚することは難しいものです。その原因は、メンバーが自分の生産性を認識していないことにあります。そのため、「いつまでに終わらせたい」という“希望的観測”に引っ張られて、見通しが楽観的になってしまいます。

 こうした落とし穴に陥らないためには、あらゆる作業について、自分は単位時間当たり、どの程度こなせるのかを知っておくことが重要です。これは簡単です。ある作業が終わったら、終えるまでにかかった時間を確認し、1時間当たりの作業量、または一単位当たりの作業時間を記録しておけばよいのです。

 これは、製造現場では普通に行われていることですが、ITの現場では生産性の管理はまだまだ不十分と感じます。生産性を把握すれば、生産性向上という効果も得られます。自分の生産性を知っていれば、極端なことを言えば、作業を始める前にイエローフラッグを挙げられるはずです。

「20分ルール」のススメ

 ケンブリッジ・ファシリテーション研究所には、「20分ルール」があります。これは、「20分考えて、先へ進まなかったときは、だれかに相談する」というものです。

 「下手の考え、休むに似たり」という言葉がありますね。「どうしようかなぁ~」と考えていると、何も進まないうちにすぐに20分くらい経ってしまいます。ある程度の経験があれば、即座に「あっ、これは俺一人ではできないな」と分かるものですが、未熟なメンバーにはそれが判断できません。

 筆者もその昔、先輩から「コンサルタントは、自分が何を理解していないかを理解しなければならない」と教えられました。この言葉から学んだことは少なくありませんが、その一つは、「自分が知らないこと、できないことを早めに見つけ、その答えを持っている人に早めに相談せよ」ということです。