「プロジェクトの目標がぼやけている」「メンバー間の意見の不一致が放置されたまま」「会議で延々と議論する割には結論が出ない」――。こんな症状に悩んでいませんか。こうした症状の治療方法にファシリテーションがあります。当研究所では、プロジェクトを円滑に進めるために、ファシリテーション・テクニックを研究し、実践のお手伝いをしています。現場で培った数々のテクニック/ノウハウの中から、即効性があるツールを紹介していきます。第1回は、「イエローフラッグ」です。

 みなさんは、「イエローフラッグ」ってご存知ですか。モータースポーツがお好きな方は何度も目にしたことがあると思います。コース上に故障車や事故発生などの危険があることを、ドライバーに知らせるために振られる黄色い旗のことです。

 当研究所では、これをプロジェクト管理に活用しています。自動車レースとITプロジェクト。一見、全く関係ないようにみえますが、プロジェクトを進めるうえで大変強力なツールなのです。どのように活用しているのかをご紹介しましょう。

問題を抱え込むメンバー

 みなさんの中には、IT導入プロジェクトのリーダーやマネージャーを担当されている方も少なくないと思います。であれば、次のような悩みをお持ちではないでしょうか?

●配下のメンバーが、進捗遅れをタイムリーに報告してくれない
●メンバーが人知れずスタックしており、ほとんど進捗していない
●メンバーが問題を抱え込み、発覚したときは大問題に発展

 どれもよくある話ですよね。これらに共通するのは、速やかに報告すべき状況であるのに報告されず、結果として被害が大きくなってしまうということです。

 人間だれしも、悪い内容の報告はしたくないものです。上司に叱られたくはないですし、同僚に「何だ、そんなこともできないのか」と思われるのもシャクです。そして、「できることなら、自分ひとりで解決し、だれにも知られずにおきたい」と考えることになります。これが問題を抱え込むメカニズムです。

 これは人間の自然な心の動きですが、一方でプロジェクトにとっては大きなリスク要因となります。問題発生や進捗遅れがタイムリーに把握できないと、どんどん後続タスクに影響を及ぼします。遅れれば遅れるほど、影響範囲は広がってしまいます。

 特に経験の浅いメンバーは、自分で問題を解決する能力が未熟ですから、注意が必要です。若手のメンバーが思考の永久ループに入ってしまい、気がつくと1時間たっても何も進んでいないということを知り、愕然とした経験はだれにもあるでしょう。この1時間はプロジェクトにとっては、ムダな時間です。

 プロジェクトを管理する立場からすると、人間の自然な心の動きに反して、悪い報告を速やかにあげてもらう必要があるわけです。ここに難しさがあります。このような悩みに効くのが、イエローフラッグです。