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 「創造的な仕事(クリエイティブワーク)」を進めるために、PCの機動性を高め、「いつでも、どこでも、誰とでも」協働できるようにする。こうした「遊牧型」のPC利用を進めるには、発想を転換しなければならない、とコンサルティング会社シグマクシスの戸田輝信パートナーは説く。本講義に質問や意見がある方は、最後にあるコメント欄に記入頂きたい。連載終了後、代表的な質問について戸田氏から回答してもらう予定である。(Enterprise Platform編集部)

 第1講で、クリエイティブワークのためには、従来の鎖国型アプローチから脱却し、遊牧型アプローチにシフトすることが必要だと説明した。

 鎖国型アプローチは、情報セキュリティを維持するための施策として登場したものだ。サーバー、PC、それらを結ぶネットワーク(専用線)の3要素を外界から隔離することにより、セキュリティを保とうとする。

鎖国型ではインターネットは例外

 そこでは、社内をクリーンな状態に保つために、社内のPCは持ち出せないし、社外からPCを持ち込むこともできない。無線LANは禁止し、インターネットアクセスにも制限をかける。インターネットアクセスにあたっては、ファイアウオール(F/W)や侵入検知システムを使い、社内ネットワークにウイルスなどが紛れ込まないように注意を払う。つまり、あくまでも社内ネットワークが主であり、インターネットアクセスは例外という位置付けになる(図3)。

図3●セキュリティを維持するための施策
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 しかし、PCの移動や持ち出し持ち込みを制限すると、社員や社外の人がいつでも、どこでも仕事をする訳にはいかない。インターネットアクセスを制限し過ぎると、世の中の情報を収集する機会を失ってしまいかねない。

 また、鎖国型アプローチは、社外からの不正アクセスに対しては相当な配慮をしているが、逆に社内からの不正アクセスについては弱い場合が多い。社内からの不正アクセスをするのは、社員とは限らない。企業に出入りしている関係者が、社内ネットワーク経由でサーバーにアクセスしたり、資料を持ち出したりしないという保証は、ゼロではないのだ。鎖国型の場合、いったん社内に入ってしまえば、サーバーに容易にアクセスできるし、社内ネットワーク内のデータを暗号化していない場合、傍受も比較的簡単にできるだろう。

 第1講で私は次のように述べ、「遊牧型」のアプローチを提唱した。

 PCを自由に持ち運べて、「いつでも、どこでも、誰とでも」仕事ができるアプローチを、「遊牧型」と呼びたい。遊牧民のように、自由に移動し、好きな場所で仕事をする、といったイメージである。遊牧型ワークスタイルのためには、遊牧型のインフラが求められる。

 そして第1講の最後では次のように述べた。

 「いつでも、どこでも、誰とでも」仕事ができるワークスタイルを支えるには、PCの機動性を高める、PCの可用性を高める(故障時などに迅速に対応する)、PCの安全を守る、といった、相反する三つの条件のトレードオフを考えないといけない。