みなさん、こんにちは。当研究所では、グローバリゼーションをキーワードに、これからの企業基盤を考えています。第1回第2回を通して、IT部門が今後直面する課題に対し、グローバリゼーションのフレームワークやIT部門として取るべきガバナンス形態について具体的に説明してきました。第3回からは、いよいよ核心に入っていきましょう。

 IT部門がグローバリゼーションを進めるうえで取り組むガバナンスの構成要素には、「心」=能力(人材)・組織、「技」=テクノロジ、「体」=プロセスの三つがあると説明した。今回はまず、「心」の部分、すなわち人材や、組織、環境について、話を進めたいと思います。もし、みなさんが利用部門に属していたとすれば、IT部門がどのような考え方でITを展開しようとしているかを想像しながら、読み進めてみてください。

テクノロジを生かすのは人

 心・技・体の中で、私が一番重要かつ難解な部分だと思っているのが「心」です。なぜならば、次回以降にお話しする「技」「体」を円滑に動かすためには、それなりのスキル・能力・人材育成が望まれるからです。また、人の育成には大変な労力、コスト、時間を要します。そして人材育成に取り組む前に、「人材のあるべき姿」を定義し、各企業が必要とする人材像を描く必要があるからです。

 これまでに私は、いくつもの企業でIT部門の責任者を務めてきました。そして、IT部門の責任者として一番大変だった仕事が、人材育成のための人材像を創造し、アクションとして人材を育成することでした。一言に人材像を描くといっても、その企業の目標や戦略により、IT部門の「あるべき姿」は変わりますし、それによって、人材像も変わってきます。ですから、あるべき姿を描く前に、企業戦略を理解することが肝要なのです。

 私は人材像を描く際は常に、始めのステップとして、企業戦略やIT戦略、それらの目標を基に、それらをサポートするIT部門の機能を分析します。そして、その延長上からスキルを分析していくのです。何か難しい教科書のような話に聞こえるかもしれませんが、以下に示すように簡単な手法ですので、みなさんも是非試して下さい。