アステラス製薬のCIOである重富俊二コーポレートIT部長

 2005年に山之内製薬と藤沢薬品が統合して誕生したアステラス製薬。システム統合を完了後は(関連記事)、東京・大阪間で基幹システム内にある重要な情報を二重化する環境を構築するなど情報基盤の整備を進めてきた。

 次に目指すのは世界視点での全体最適である。これまではアジア・欧州・米国と3地区でそれぞれの情報システム部門が個々に必要なシステムを構築してきた。2008年秋から見直し作業を進め、共通基盤の構築を目指している。一連の取り組みを進めているのが、CIO(最高情報責任者)を務める重富俊二コーポレートIT部長だ。重富部長は、旧藤沢薬品でもCIOを務めていた。

 グローバルな最適化にまず取り組む予定の領域が、認証基盤の統合である。メールやサーバーへの認証基盤を共通化して、地域をまたいだ情報収集をしやすくするためだ。従来は日本で研究開発した情報を他地域の担当者が収集するには、いったん世界中から見られる別なサーバーに情報を置いてもらう必要があった。「海外からの出張者がメールを読もうとすると手続きが必要など不便な面があった」(重富部長)と話す。

 さらに、業務で使用するパソコンの仕様を統一して調達先も絞り込む。OS(基本ソフト)やウイルス対策ソフトウエアの導入から廃棄までのプロセスを統一する。情報セキュリティーも強化する。重富部長は「集中購買でコスト削減も期待している」と話す。業務で使用するアプリケーションも強化したい考えだ。

 情報基盤のグローバル対応を進めるなかで、IT(情報技術)ベンダーには注文をつける。日本のITベンダーには、グローバルで十分に対応してくれる企業が少ないという。重富部長は、日本のITベンダーが世界各国に対応窓口を持ち、世界中からプロジェクトに最適なソフト会社を見つけてきてプロジェクトをまとめてくれることを期待している。「ITベンダーは、大事なビジネスパートナーだと考えている。大事なパートナーであるからこそ、我々が気づかない提案をしてくれることを期待している。外資系ベンダーも他国のノウハウを十分に日本で生かしていないようにも感じる」と話す。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・IT業界にありがちな3文字英語を使わずに、経営陣が理解しやすいように話すことを心がけています。以前経営企画部門にいたので、特に気をつけています。このところの円高により為替差損が発生しているので、情報システムもコスト削減に迫られています。投資額を増やせない分、仮想化技術を活用することで運用固定費を減らして、新規投資に回せるようにしたい

◆システム部門に期待すること
・グローバルに情報システムを最適化するうえで、システム部門の人材もグローバルで通用するように研修を強化しています。最近では2008年秋にインドのプネに2カ月派遣しました。プネは、バンガロールなどと同じように情報システム会社が集まる地域で、異文化のメンバーを束ねてプロジェクトを推進できる能力を磨いてほしい。このほか、米国や欧州の業務部門との人事交流を活発にしていきたい

◆普段読んでいる新聞・雑誌・インターネットサイト
・FORSIGHT(新潮社)
世界経済の動きが分かりやすくまとめられています

◆最近読んだお薦めの本
・塩野七生氏の本が好きで、すべて読みました

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が主催する勉強会

◆ストレス解消法
・妻と行く海外旅行が趣味で、特に地中海沿岸が気に入っています。 なかなかまとまった時間が確保できず出かけられないのが悩みです