◆今回の注目NEWS◆

オンライン申請システムの停止に関する意見募集について(内閣官房,総務省,文部科学省,防衛省,11月18日)

【ニュースの概要】文部科学省,防衛省の申請・届出等受付システムについて,電子政府評価委員会は「停止が適当」と判断,政府は停止についての意見募集を開始した。


◆このNEWSのツボ◆

 いわゆる電子申請などの行政電子化手続きにおいて,非常に利用度が低いものが存在し,その存続意義については,何度か,このコラムでも指摘をしてきた。

 今回の発表では,文部科学省と防衛庁の二つの電子申請サービスが停止の方向で検討されるということのようだ。確かに,この二つのサービスの停止によって,合計で年間1億1000万円を超える費用が削減されるとのことである。筆者自身,こうした見直しはかねてより主張してきたところであり,今回の決定は,これだけの費用節減が実現するのであれば,歓迎すべきものかもしれない。

 ただ,なんとなく釈然としないものが残ることも事実である。これらのオンライン申請システムは,なぜ利用度合いが低かったのだろうか?そもそも,ニーズのないサービスを電子化したのか? それとも,オンラインによる手続き自体が煩雑すぎるシステムであったことが原因だったのか? 構築費用はいくらだったのか? 停止によってランニングコストが節減されるのは分かったが,いったい今までに幾らの費用を無駄に使ったのか?……こうした情報がほとんど開示されていない。

 筆者のかかわっているある自治体での話だが,鳴り物入りで構築した電子申請システムが,煩雑すぎてほとんど利用されなかったため,先日思い切って民間企業の提供する簡易なASPサービスに切り替えたところ,コストは激減し,利用は伸びた……という話を聞いた。これなどは,ニーズはあったのだが,システムのデザインが不適切であった…ということなのだろう。

 しかし,公的個人認証や住基カードなど,公的部門が提供する電子サービスは,ともすれば,安全安心を必要以上に強調しすぎて,過剰装備で使い勝手が悪く,利用が低迷するケースも少なくない。従って,自己責任原則に基づく簡易なサービスがもっと存在してよいと考えるのは筆者だけではないはずである。

 そうした意味で,今回の「利用停止」は許容するとしても,これで失われた貴重な財源の総額,利用が低迷した原因と責任の明確化と公開……といった措置が採られなければ,また,同じような過ちが繰り返されるのではないだろうか?

 そういえば,鳴り物入りでスタートした,自動車関係手続きのワンストップサービスも利用が順調に伸びているという話は聞かない……と思っていたら,先日,利用率わずか0.67%という会計検査院による調査資料が公表され,大幅な見直しを迫られているようだ。(関連記事)。

安延 申(やすのべ・しん)
フューチャーアーキテクト社長/COO,
スタンフォード日本センター理事
安延申 通商産業省(現 経済産業省)に勤務後,コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO,スタンフォード日本センター理事など,政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。