コンピュータの歴史を振り返った時、パーソナルコンピュータ(PC)の登場と普及を最重要事項の一つに数えることに反対する人はいないだろう。PCは大きな変化を世の中にもたらした。企業で家庭で屋外で、あらゆる場所とあらゆる時間帯にPCは使われている(関連記事[仕事とPC2500人調査]過度の制限が生産性を下げる)。

 効果的・効率的に仕事ができるようになった反面、PCの管理や情報セキュリティの問題が発生した。このため、PCを提供するIT企業とPCを利活用する企業は、PCの利便性をさらに高めつつPCにつきまとう問題を軽減する、という舵取りをともに迫られている。

 その一つとして、「Trusted Client PC」というアプローチがある。Trusted Client PC、すなわち頼りになるPCとは、個人がコンピュータをフル活用するというPC本来の価値を維持しつつ、管理の手間を省き、情報を安全に守るものである。Trusted Client PCを実現するには、PCのハードウエア、基本ソフト、応用ソフト、それらを組み合わせたシステムを支えるサービス、といった諸要素が必要になる。

 ここへ来て、関連ハード、ソフト、サービスが連携できる状況になってきた。10月に開催されたIT総合イベントITpro EXPOの主催者企画「Trusted Client PCパビリオン」で発表、展示された関連技術を振り返りつつ、Trusted Client PCの最新状況を確認してみたい(関連記事「不調なPCを遠隔操作、低消費電力の小型PC」)。

ハードウエアの支援が必要な訳

 PC技術をウオッチしているエム・アイ・ネットワークの伊勢雅英代表は、「業務でバリバリ使っていく以上、PCは利用者が心底から信頼を寄せられるようなビジネスツールでなければならない。信頼できるクライアントPCの要件として、どんな作業も快適にこなせる処理性能の高さ、使っていてすぐに壊れたりしない耐久性はいうまでもなく重要。さらにビジネスで使うという観点から運用管理機能と情報セキュリティ機能に注目すべきだ」と指摘する(関連記事『信頼できるPCを求めて』)。

 伊勢氏は続けて、「運用管理や情報セキュリティについて突き詰めていくと、ソフトウエアだけではなく、ハードウェアで支援しなければならなくなる。そのアプローチの一つが、インテルvProテクノロジーを搭載したPCの利活用になる」と語る。

 vPro搭載PCは、運用管理機能をハードの一部に実装しており、PCにLANケーブルと電源ケーブルが接続してあれば、電源が入っていなくてもリモートから電源を入れられる。また、OSに異常があり起動しなくなった場合でも、正常なOSをリモートから送り込んで復旧できる。通常の運用管理機能や情報セキュリティ管理機能はソフトウエアを使って実現されているが、PCそのものが動かなければそうした機能も使えない。したがってPC全体の信頼性を確保するには上述のようなハードウエアによる支援が必要になるわけだ。