◆今回の注目NEWS◆

第1回「電子政府ガイドライン作成検討会」(10月2日、内閣官房IT担当室)

【ニュースの概要】内閣官房IT担当室は10月2日、第1回「電子政府ガイドライン作成検討会」を開催した。この検討会は、オンライン利用拡大行動計画(平成20年9月12日IT戦略本部決定)に基づいて、セキュリティとユーザビリティについて政府横断的なガイドラインを策定する。


◆このNEWSのツボ◆

 オンライン利用拡大行動計画に基づいて、電子政府の諸手続の利用拡大、利用促進を図るために、各府省共通のガイドラインを作成するための検討会が立ち上げられた。

 この検討会は、来年3月まで継続的に開催され、3月までに基本的な方向性を取りまとめ、来年6月には、最終的なガイドラインを取りまとめるとされている(スケジュール案)。

 しかし、正直に言うと違和感がある。前回のコラムで触れた「オンライン利用拡大行動計画」とも関連してくる話だが、5年以上前から非常に使い勝手の悪い電子手続きの仕組みをバラバラに導入しておいて、その普及率が悪いと言って、オンライン利用拡大の行動計画をとりまとめ、次に、その際に指針となるガイドラインを取りまとめる……。何か順序が逆な気がするのは私だけだろうか?

 しかも、もう一点気になるのは、「セキュリティ」を検討する分科会と「ユーザービリティ」を検討する分科会が独立して設置され、それぞれが検討結果を取りまとめることになっている点である。スケジュール表には「相互の依存関係(セキュリティを高めるとユーザビリティが低くなるなど)について随時調整を行い」とあるものの、どの程度緊密に相互調整ができるかが懸念される。

 今日、オンライン関係の諸手続の利用が進まない大きな理由は、「ニーズ把握不在」で検討が進められたことが大きな原因だが、もう一つは、セキュリティとユーザービリティ、あるいは「自己責任の原則」のバランスが図られないまま、予算があるから使え…とばかりに様々なオンライン化が進められたことである。その結果として、住基カードを手に入れて、ICカードリーダーを手に入れて、公的個人認証を取得し……と、とても使う気にならないような電子手続きが氾濫してしまった。

 今、求められるのは「セキュリティとユーザビリティをどうバランスさせていくか」という点の突っ込んだ検討ではないだろうか? セキュリティの専門家がセキュリティの大事さを声高に叫び、利用者サイドからは「もっと便利に使いやすく」という要求が出される…という妙な結果にもなりかねない。

 多額の公的資金をつぎ込んだオンライン手続きの現状を見ると、何らかの「改善」が必要なのは事実だろうし、公的個人認証を用いない手続きを検討するというのも、妥当な方向だと考えられる。

 そこから更に一歩進んで、共通ガイドラインを検討するのであれば、単なる「建前の列挙」ではなく、本当に「使いやすい」オンライン手続きが実現されるような具体的な成果を望みたいものである。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。