写真1●プラネックスコミュニケーションズの11対応USBアダプタ「GW-USMini2N」
写真2●プラネックスコミュニケーションズの11対応USBアダプタ「GW-USMiniS」
写真1(上)●プラネックスコミュニケーションズの11対応USBアダプタ「GW-USMini2N」
写真2(下)●プラネックスコミュニケーションズの11対応USBアダプタ「GW-USMiniS」
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 規格としてはまだドラフト仕様ながら普及が進む高速無線 LAN仕様「IEEE 802.11n」。最大150Mビット/秒ながら3000円を切る小ぶりなUSBアダプタが登場したので,評価用に購入することにした。ところが買う段になって大いに迷った。速度が倍の300Mビット/秒で同じ実売価格の製品があるのだ。

 最初に食指が動いた製品は,150Mビット/秒で2980円のプラネックスコミュニケーションズ製「GW-USMini2N」(写真1)である(関連記事)。11b/g/nの2.4GHz帯に対応。USBポートに挿しっぱなしにしても他のUSB機器が難なく装着できる小型な筐体が売りの製品だ。11nの高速化手法の一つであるMIMO(関連記事)には非対応だが,2チャネルぶんの帯域を使うチャネル・ボンディングなどで物理速度は150Mビット/秒を確保している。

 利用を想定する評価用ネットワークのWANは,実効速度が数十Mビット/秒。理論値150Mビット/秒の2掛けでも事足りる。購入を決断して価格比較サイトを探すと,Amazon.co.jpが最安だった。

 Amazonのサイトで早速購入しようとすると,リコメンド製品として同じプラネックス製の802.11n製品がずらりと並ぶ。これはどうしたことかと見てみると,同じ実売価格2480円で300Mビット/秒の11n対応USBアダプタが売られている。Amazon.co.jpユーザーの「違いは何か」と迷った結果がリコメンドに現れていた。その中の一つ,「GW-US300MiniS」は物理速度がUSMini2Nの倍の300Mビット/秒。世界最小クラスをうたうものの,USMini2Nよりサイズやや大きめ(写真2)で,上下2段のUSBポートでは干渉が避けられない。

受信で300Mbps版が強く,送信は互角

図●プラネックスコミュニケーションズの11対応 USBアダプタ「GW-USMini2N」のベンチマーク結果。親機はバッファローの「WZR-AGL300NH」で,2.4GHz帯のチャネル・ボンディングを有効とした。測定はiperfを使用。値は5回測定した平均値
図●プラネックスコミュニケーションズの11対応 USBアダプタ「GW-USMini2N」のベンチマーク結果。親機はバッファローの「WZR-AGL300NH」で,2.4GHz帯のチャネル・ボンディングを有効とした。測定はiperfを使用。値は5回測定した平均値
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 結局両方の製品を購入し,理論値150Mと300Mの差を検証することにした。見通し3mの理想環境と,オフィスのパーティションの壁越しで20mの2種類の環境で測定。親機はバッファローの「WZR-AGL300NH」である。結果は理想環境ではGW-US300MiniSが強いが,実際の使用環境に近い壁越し20mではGW-USMini2Nが逆転する結果となった。

 見通し3mの理想環境の結果()を見ると,受信ではUSMini2Nの57.2Mビット/秒に対してUS300MiniSは104.2Mビット/秒。実効速度で約1.8倍と,ほぼ額面通りのスループットが出ている。送信は双方約40Mビット/秒で互角。11nは複数のアンテナおよび無線機を使うことで周波数利用効率を高めているが,製品によって受信と送信で使う無線機の数が違う。送信時の測定値が同じなのは送信は1ストリームしか使わないためだ。

壁越しの悪環境では150Mbps版が逆転

 壁越し20mでは,USMini2Nの受信38.2Mビット/秒に対して,US300MiniSは23.2Mビット/秒と見通し環境での優劣が逆転。参考用に測定した802,11g接続のLet'snote内蔵無線LANの20.2Mビット/秒とさほど変わらない。同じ地点に測定用ノート・パソコンを置いた際のアンテナの位置は若干違うため,少しずつ位置をずらして測定してみてもUSMini2Nが優位を保った。

 GW- USMini2NとUS300MiniSのデータシートをOEM元と見られるメーカーのWebサイトでチェックすると,無線機の利得など基本性能は同じである。違いはアンテナが1か,2か。製品に付属するユーティリティを使ってリンク速度を見ると双方81Mビット/秒での通信が多いが,MIMO対応のUS300Mini2Nの方がリンク速度が安定しない。より高いリンク速度に到達しようとして108Mビット/秒になったかと思えば,27Mビット/秒にまで下がるといった具合だ。

 結局常用するのは,実際の利用環境での実効速度が高かったGW-USMini2Nにした。見通し環境での利用で少し大ぶりな筐体が気にならなければUS300MiniSを選んだだろう。複数のアンテナで波をかき集め速度をかせぐ11n製品の選択は,企業ユーザーでも無ければ一種の“賭”だということを再認識した。

 もっとも11n対応USBアダプタは,既に買い直せる程度の価格が相場。プラネックス以外からも小型の11n対応USBアダプタが登場したら,もう1本,あと1本と買ってしまいそうだ。