この春,主要な国内ポータルサイトが相次いでトップページをリニューアルした。情報ポータル分野では2008年3月31日にgoo,4月7日にlivedoor,4月14日にMSN Japanと新トップページの公開が続いた。検索大手のGoogleも3月19日にトップページをリニューアルしている。2008年1月のYahoo!ジャパンのリニューアル(関連記事:メディアとしての価値を向上させる -- 1月1日正式公開のYahoo! Japan新トップページ)が先陣を切ってから数カ月で,主要ポータルの顔が一新された格好だ。

 ポータルサイトは何万人というユーザーが日々訪れる場所。それだけに,ここには幅広いユーザー層に受け入れられているデザインのポイントがあるはず。各ポータルサイトのデザイン的な共通点や,訴求ポイントの違いを分析して「ページ・デザインのトレンド」を探った。

goo(3月31日リニューアル)   livedoor(4月7日リニューアル)
goo(3月31日リニューアル)
「緑のgoo」というトップページに切り替えると,閲覧するだけで環境保護活動に貢献できるという企画も
 
  livedoor(4月7日リニューアル)
ブログのエントリーをトップページへ積極的に反映した
MSN Japan(4月14日リニューアル)   Google(3月19日リニューアル)
MSN Japan(4月14日リニューアル)
タレント満載でメジャー感漂うMSNの新トップページ。米国のMSNはタブ・インタフェースを使っていない
  Google(3月19日リニューアル)
リニューアル後も質実剛健さは健在。米国とはトップページ・デザインが異なる

検索機能が目立つように

 まずはページの「見た目」から見ていこう。goo,livedoor,MSN Japanの3サイトに共通する特徴は,従来よりも検索ツールにあてる面積を増やしたことだ。Googleの急成長に見られるように,Webで現在,検索に対するニーズが非常に高いことへの対応であろう。

 ページ・レイアウトの観点からは,自社のサービス紹介を左に,中央にニュースなどの注目記事を置いて,右に天気や占いなどパーソナライズ可能なサービスを表示している,という「3カラム(段)レイアウト」になっていることが挙げられる。海外のポータルにも多いこのレイアウト・パターンは,「ポータル業界標準レイアウト」といったところだ。見ための印象は似たり寄ったりになるものの,どのポータルでも似たような操作性で使えるほうが混乱しなくて良いので,個人的にはありがたい。

 各サイトのページ・レイアウトが似通って来たことからは,ポータルサイトがビジュアルのデザインによる「見ための差異化」に切磋琢磨する時代から,操作性やコンテンツで優位性を示す時代に入ったことが伺える。

 ただしgooは,デフォルトの3カラム・レイアウトから2カラム・レイアウトへの切り替え機能を搭載して,カスタマイズ性を残した。MSN Japanはユーザーの環境を取得して,ユーザーの画面解像度が小さい場合は自動的に2カラム・レイアウトに切り替える方法を採用しているほか,ページオプション機能でワイド用,狭い画面用の切り替えができるようにしている。

Ajaxタブ・インタフェースを採用

 操作性に関する共通特徴としては,Ajaxタブ・インタフェースの採用がある(gooの真ん中のカラムの上から2番目など)。どのサイトもWebページで最も注目度が高い「勝負エリア」である画面中央に,ニュース記事表示用Ajaxタブ・インタフェースを配置している。検索ツールのみのトップページスタイルを貫いてきたGoogleでさえ採用している。

 Ajaxタブ・インタフェースでは,ユーザーがタブを選択すると部分的に情報を入れ替えて表示する。そのため,たくさんの情報を小さい面積に収められると同時に,画面に一度に表示する情報を減らすことで情報を見やすくするという狙いもある。

 しかしJavaScriptの動作をオフにしているユーザーが使ったらどうなるのだろうか? 試しにJavaScriptの動作をオフにしてニュース記事切り替え用タブをクリックしてみた。

 gooの場合はトップが再読込されるだけで画面は切り替わらなかった。MSN Japanとlivedoorでは,各タブのカテゴリのトップページにジャンプする。Googleの場合は,すべてのタブがGoogleサービス一覧のトップにリンクしていた。

 MSN Japanやlivedoorのように各カテゴリがトップページを持つ構造になっていれば,JavaScriptがオフでもナビゲーションとして機能する。しかし,gooやGoogleのようにサイトの構造とは無関係にリンク先をアグリゲートするのは,使い勝手の点でちょっと難がある印象も受けた。

ニュース記事周辺が“一等地”

 最後にコンテンツを見ていこう。コンテンツの特色は三者三様だ。livedoorは,「livedoorブログ」内の情報を全面に押し出す。gooは「gooランキング」や「教えてgoo」を強調してCGM(Consumer Generated Media)ポータルという印象を強めた。国内外の芸能人が常に画面を飾るMSN Japanは,マスメディアとの連携が感じられる雰囲気である。

 まずは,勝負エリアに置いてあり,更新頻度が高いのでつい目を向けてしまうニュース記事について見てみよう。gooとMSN Japanは自社コンテンツをニュースより上に表示させて,押し出したいコンテンツをニュースと一緒に視野に入れる工夫をしている。

 Webデザインでは「ファーストビュー(アクセスした瞬間ディスプレー上で一望できる範囲のこと)」でユーザーの視線が集まりやすい位置を「画面左上」とする考え方がある。しかし,ポータルサイトの場合,ニュース記事の周辺が“一等地”のようだ。更新頻度の多い部分に視線が集まりやすいという傾向は,他のサイトのデザインでも応用できそうな考え方である。

広告を分散し,記事は「見出し勝負」

 そのほかに,広告を分散して表示するようになったことも最近の傾向としてあげられる。以前はバナーやPRコンテンツの表示エリアを「画面右側」のように固定することが多かった。しかしその方法では,バナー同士が近づきすぎてエリア全体が1つの派手な壁紙のように見え,それぞれのバナーで伝えたいことが埋没したり,エリア全体をユーザーが視野から外すようになるといった不都合があった。

 リニューアル後のページではバナー形式の広告をニュース記事脇の一等地に限定し,他のPRコンテンツは自社コンテンツと区別のないデザインで表示している。結果的にバナーはしっかり目立ち,PRは「気になるコンテンツ」の1つとして機能しているように見える。

 また,余計なビジュアル要素を削り,テキスト中心で勝負する新トップページが,必然的に「見出し勝負」になっている点も見逃せない。各社限られた文字数でキャッチーな見出しにすることで,できるだけリンクをクリックしてもらえるようにしのぎを削っている。デザイン的な要素だけでなく,コピーライティングの参考としても,新ポータルサイトをチェックする価値ありだ。