ソフト開発者向けのDevelopmentサイトは,他のテーマ・サイトとは少し事情が異なる。Developmentではニュース記事がほとんどない。ソフト開発に関する入門記事,技術解説,コラムなどを提供するサイトだからだ。このため,他のサイトでは製品発表や事故/障害などのニュース記事がランキング上位を独占するのに対して,Developmentのランキングに上がるのは,特集や連載の一部になっている解説記事が中心である。その点を踏まえて,ランキングを眺めていただきたい。
データベース特集が
20位内に5本ランクイン
2007年のトップになったのは「データベースにまつわる怖い話」である。データベース開発の実務経験が豊富な開発者の方々に,実際に体験したトラブルを語ってもらったものだ。トラブル体験や失敗事例などには,教訓となる話が多い。似たシステムを開発している場合は,他人と同じ轍を踏まないように事前に対策を講じることができる。
この記事は,SQLに関する知識不足,データベース運用や設計に関する問題などによって発生したトラブルについて,コラム感覚で書かれていて,非常に読みやすく,おもしろい。そうでなくても他人の失敗経験は,誰でも気になるもの。アクセス数トップになるのもうなずける。
なお,この記事を含む特集「データベースを基本から理解する」の各パートは,トップ20までに5本ランクインしている。2007年に最も読まれた特集になった。
長く“くさらない”記事が強い
2位から5位までの記事は,実は2006年(10月から12月にかけて)に公開した記事である。早くに公開した,つまり公開期間が長いぶんだけ,アクセス数が多くなるのは,ある意味当然である。が,ランク上位の理由はそれだけではない。
一般に,速報的な価値が高いニュース記事は,瞬間的に多く読まれて,その後はだんだんアクセス数が減っていく。しかし,人気の高い解説記事は,安定的にずっと読まれているのが特徴である。それはなぜか。端的に言えば,内容が“くさらない”からだ。2位から5位までの記事は,Delphi入門,Java入門,アルゴリズム紹介,Ruby on Rails解説となっている。誰にでも読める基本的な内容で,しかもいつ読んでもすぐに役立つものだ。とりあえずブックマークしておいて,後で読むのにも適している。
そういう意味では,9位の「Windowsのプロセスを詳しく探る」や11位「オブジェクト指向を正しく理解する」も同じ系統である。Windowsのバージョンがどんなに変わろうとも,Windowsの仕組みと基本APIを知っておくことは必ず役に立つ。オブジェクト指向もしかりだ。画期的な新しいパラダイムが登場しない限り,オブジェクト指向は開発者にとって普遍的で必須の知識である。
それにしてもTurbo Delphiの人気は根強い。ビジュアル開発ツールの市場シェアから考えれば,Delphiの記事がこんなに読まれるのは不思議な気もする。フリーで使えて,しかも完成度の高いツールとして,いかにDelphiがユーザーに支持されているかがわかる。また,Delphiのバージョンがずっと変わっていないことも,この記事がいつまでも価値を失わない理由になっている。
まつもと人気,高し
6位の特別対談「まつもとゆきひろ×結城浩,Rubyを語る」は,企画(日経ソフトウエア)の勝利と言えよう。今や世界にその名を知られるRubyの生みの親,まつもと氏と,デザインパターンやJava解説などで数々のベストセラー本を執筆している結城氏の対談は,誰でも読んでみたいと思うだろう。言語マニアの二人らしい,深みのある内容も非常に良かった。
この記事では,日経ソフトウエア発売とほぼ同時にITproで公開するという初の試みも行った。ネットのヘビーユーザーにより多く読まれるだろうという予想通りの結果になった。
10位の「オープンソース/C言語に学ぶソースコードの読み方」は,まつもと氏本人に執筆していただいたものだ。「ソースコードを読むための三つの戦略」といった彼らしい実践的な内容がおもしろい記事である。開発者に人気があるまつもと氏がからむ記事は,常によく読まれる。
最後に,20位の「正しいPerl/CGIの書き方」に触れておきたい。この記事は2007年10月公開なので,ほかの記事よりずっと公開期間が短いにもかかわらず20位にくい込んだ。短期間にいかに数多く読まれたかを示している。
Shibuya Perl Mongersリーダーの竹迫良範氏に書いていただいたもので,今風のPerlコーディング・スタイルをわかりやすく解説している。とても役立つ記事である。おそらく,「初心者がJavaを“超高速”で学ぶためのコツ」と同様に,今後Developmentサイトの代表的なコンテンツの一つになるだろう。