8回にわたって、日経コンピュータが第2回「企業のIT力」ランキングを作成する際に着目した8つの視点について1つずつ取り上げていく(→100位までの総合ランキングと調査の詳細はこちらの記事を参照)。3回目は、企業がIT投資の効果をどのように把握し、管理しているかを聞いた「IT投資の管理」を紹介する。IT関係支出の総額やIT投資の評価をする際に利用する手法など8個の設問(調査票から「IT力」の算出に使った質問を抜き出して柱ごとにまとめた「抜粋版」)を聞いたところ、1位にリコーが入り、2位はエーザイが続いた。

「IT投資の管理」ランキング

順位 企業名 偏差値
1 リコー 68.82
2 エーザイ 68.78
3 国際航業 68.17
4 東京スター銀行 67.91
5 大和証券グループ本社 67.59
6 セブン-イレブン・ジャパン 67.30
7 三菱電機 66.14
8 浜松ホトニクス 65.46
9 NTN 65.17
10 損害保険ジャパン 64.88



第1位 リコー

 リコーは、情報システムのROI(投下資本利益率)やKPI(重要業績評価指数)、ユーザー満足度など6種類の手法を利用し、IT投資を評価していることが高い評価につながった。同社はIT投資をインフラ型投資とプロジェクト型投資に分けて管理している。前者は連結売上高の0.75%と総額を固定し、コスト削減を追求する投資だ。後者は中期経営計画に基づいて投資する案件で、プロジェクト単位で投資効果を追求する。利用部門が効果を出す責任を負うが、IT部門が効果を出せるように支援しているのだ。

 同社は2004年以来、「IT投資の成果刈り取り」活動を続けている。この活動には2つの特徴がある。1つはプロジェクトを開始する前に、必ず具体的な金額で効果を見積もること。業務効率を上げるシステムのように、金額に換算しにくいプロジェクトであっても、例外ではない。「10人必要な作業を9人でできるようにし、1人は別の部署での仕事に従事することで、いくら売り上げ増加に貢献する」、といった具合に効果を見積もる。

 もう1つの特徴は、システムが稼働した後に、見積もった効果を出せているかをどうかをIT部門が検証していることだ。利用部門が効果を出せていない場合、IT部門にはシステムの利活用を促し、効果を出せるようにする役割がある。時には、利用部門の使い勝手を向上するように機能を改善することもある。リコーのように、実際に約束した効果が出せているかを検証し、効果が出せるまで改善活動を続ける企業はまだ珍しい。


第2位 エーザイ

 エーザイはIT投資を評価する際、利用する手法はユーザー満足度だけだ。同社ではIT予算を管理するのは、各利用部門である。利用部門の予算枠にIT投資を盛り込み、利用部門自らがその限度額内でシステム化案件を決める。その際、利用部門は会社に対し、システム化案件の成果を約束する。例えば「リードタイムを減らす」「原価コストを下げる」「作業効率を上げる」という形で、定量的な項目と定性的な項目で示している。実際に、投資した成果を上げることができたかを検証するのは、基本的に利用部門だ。

 IT部門は、利用部門が会社に約束した成果を出せるシステムを作ることが、利用部門との約束になっている。ユーザー満足度を利用しているのもそのためだ。稼働後1年以内に、利用部門と一緒にユーザー満足度を調べるようにしている。