プロジェクトマネジャを前にすると、気後れするメンバーが少なからずいる。そんなメンバーは、プロジェクトマネジャに相談したいことがあっても自分で抱え込んでしまいやすい。プロジェクト内のコミュニケーションに“よどみ”を見つけたら、PMOは潤滑油としての機能を発揮してほしい。
金子 啓
マネジメントソリューションズ
プロジェクトマネジャがコミュニケーションのために費やす時間は、総作業時間の70%~90%と言われています。しかし、実際のプロジェクトを考えてみると、プロジェクトマネジャとメンバーが十分にコミュニケーションを取れているとは言い難い面があります。1日5分でもプロジェクトマネジャと会話できているメンバーは、プロジェクト内に何人いるでしょうか。プロジェクトマネジャと日常的に会話している人、少し距離を取ってしまう人、それぞれだと思います。
プロジェクトでよくこんな会話を耳にします。「この件について、プロジェクトマネジャはどう考えているのだろうか」とか、「この件は、プロジェクトマネジャにレビューしてもらわないとダメだよね」など、プロジェクトマネジャに尋ねてみなければ始まらないような話です。皆さんもそのような会話をした経験、聞いた経験はあるでしょう。
しかし、口ではいろいろ言っても、なかなか行動に移せないことも多いのではないでしょうか。つまり、「この件は、プロジェクトマネジャにレビューしてもらわないと駄目だよね」と口では言っても、実際にはプロジェクトマネジャにレビューをお願いせず、自分だけで判断してしまうようなケースがあるのです。
改めて理由を言うまでもないでしょうが、一部のメンバーはプロジェクトマネジャに対して、ちょっとした距離(人によってはものすごい距離)を感じています。こんな意見もよく耳にします。
「プロマネから、いつも資料のダメ出しをされる」
「プロマネにレビューしてもらうと、逆に宿題をたくさん出されてしまう」
「プロマネにこんな質問をしたら、相手にされないかも」
「プロマネはいつも忙しくしているから時間が合わないな」
「プロマネにこの件を相談したら、会議が深夜まで続きそう」
「今日、プロマネの機嫌はどうかな」
「プロマネは、存在が偉大過ぎる、怖い」
…
メンバーとプロジェクトマネジャの距離を縮める役割
このように見られがちなプロジェクトマネジャですが、「経験」「専門知識」は豊富です。メンバーが日々直面するさまざまな課題について、プロジェクトマネジャから気軽にアドバイスをもらえたら、どんなにいいでしょう。メンバー全員が、臆することなくプロジェクトマネジャに相談できるなら、それが理想です。
しかし、現実にうまくいっていないなら、PMOの出番です。気後れしているメンバーがいたら、「プロジェクトマネジャにぶつけて、アドバイスをもらってみませんか?」と背中を押してみましょう。そして、関係者を集めた打ち合わせの場もセッティングしましょう。メンバーとプロジェクトマネジャが一度うまく会話できれば、きっとそこから先は良い関係が築けると思います。
もちろん、プロジェクトマネジャは忙しいですから、メンバーが何も考えずに「どうしたらいいでしょうか?」と聞くような相談の仕方を勧めてはいけません。すごく難しい課題であっても、まずメンバーに調べられる範囲で調べてもらい、できれば、ざっくりとでも解決案を考えてもらいましょう。
その後、「ここまで考えてみたのですが、この先が分からないのです」と相談すれば、プロジェクトマネジャも悪い顔はしません。「過去のプロジェクトでも似た問題があったから、Aさんに確認してみてあげる」とか、「○○○で解決できるんじゃない?」といったアドバイスを引き出せるのではないでしょうか。
PMOは、プロジェクトにおける“コミュニケーションの潤滑油”でもあります。「プロジェクトマネジャには声を掛けにくいけど、PMOには気軽に相談できる」という雰囲気を作り出せていれば、プロジェクト内の意思疎通は図れます。それがプロジェクトマネジャとメンバーの距離を縮め、両者が足並みをそろえるための力となります。PMOが実践すべきファシリテーションについては、「第15回 マネジメントと現場のベクトルを合わせる」でもお伝えしました。併せて参考にしてください。
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