「社員への教育投資」、「“キーボード+ディスプレー”文化革命」に次ぐ、3番目の原則は、パソコン導入は2年計画で進めよう、ということだ。言い換えると、「パソコンを導入しても、直ぐには効果が現れないことを肝に銘じよう」となる。
社長に贈るPC活用に失敗しない七原則 |
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思い切ってパソコンを導入した経営者の気持ちとしては、直ぐにも売り上げアップ、コスト削減に直結して欲しい所だろうが、なかなかそう簡単には効果が現れない。パソコンと言うのは単なる機械であって、打ち出の小槌ではないのだ。
私の経験では、パソコンを導入してから効果が本当に現れるまで、早くて2年、平均すると3年はかかる。1年目は社員のスキルアップとカルチャー革命、2年目はマイナー業務の効率化推進、そして3年目くらいからパソコンを活用した中核業務の改革へ、と言うのが成功する企業の多くがたどるパターンだ。
以前勤務していた都市銀行で行った支店OA(オフィスオートメーション)プロジェクトでも成果を出すまでに3年以上かかったと記憶する。これは、システム部門20名、業務部門30名前後の本部スタッフが、各種パソコン研修の実施やパソコンを前提とした新業務の導入を全国の支店に対して行うプロジェクトであった。
都銀と言うところは比較的、コンピューターの利用が進んでいる業種であり、一般企業がパソコン導入を進めるよりはかなり楽な方だったと思うが、それでも効果が本当に出るまでには、数10億円もの費用と3年以上の歳月が必要だった。現在ではパソコンが完全に定着し、パソコンを活用して従来の何分の一かの人数で支店を運営できるようになった。支店長の多くが今や、「パソコンなしの支店経営は考えられない」というくらい、パソコンが現場に浸透している。
個々の企業の状況によっても違うだろうが、普通の中小企業がパソコンを導入し効果を上げるためには、最低でも2年、大きな効果を出すには3年は必要だと思った方が良い。従って将来を見据えて計画的にパソコン利用を進めることが大切だ。
2~3年もかかるのか、だったらもっと明日の売り上げに直結する所に投資しよう、と思われたかもしれない。ちょっと待って頂きたい。今、始めないと数年後には競合他社にどんどん差を付けられてしまう。その頃、パソコン導入が定着し、高いパソコンスキルを備えた社員を抱えたライバル達がどんどん売り上げを伸ばしている所を想像して欲しい。それから慌てても、数年の差を埋めるのはもはや不可能だ。
逆にまだライバルが着手していないのなら、今、パソコンに取り組み始めれば、2年後に差を付けることができる。2~3年後を睨むか、明日しか見ないか、大きな分かれ道である。
それともう一つ重要な点がある。インターネットの普及である。すでに大多数の家庭と企業がインターネットに接続され、生活やビジネスのやり方が変わり始めている。従来の社会や仕事のやり方に、インターネットを使う社会や仕事のやり方が重なってくる。こうした状況を私は「WEB化社会」と呼んでいる。WEB化社会において、企業のマーケティングや販売をどう変えていったらよいかについて記した拙著『できる社長はネットで売らない』を出版したのでぜひ参考にしていただきたい。
インターネットは、まだまだ社会や企業を変えていくだろう。その時に伸びる企業、生き残る企業は、「キーボード+ディスプレー」文化の上で、パソコンとインターネットを活用できる企業である。
2~3年後に飛躍するつもりなら、今が大きなチャンスだ。御社の将来はこれからの数年が勝負ではないだろうか。3年後の世の中をどう読むかはあなた次第である。確かに先を読むのは難しい。かつて、インターネットや携帯電話がここまで広がると思っていた人はほとんどいなかった。
将来、世の中がどうなっているかは誰にも分からない。ただ、確かなこともある。繰り返すが、パソコン導入による効果を出すのは2年~3年かかること、そしてそのパソコン導入の効果をビジネスに結びつけた企業にライバル企業は立ち向かえない、ということである。
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