今回は「戦略系アプリケーション」として,DWH(データ・ウエアハウス),ナレッジマネジメントを取り上げる。この2つのアプリケーションは,系列的に統合化されたデータ群を確実に保管,管理するものだ。うまく使いこなせば,いわゆるBI(ビジネス・インテリジェンス)として,企業の経営や販売,生産などに大きなメリットをもたらす。

 しかしいかんせん,多くの中堅・中小企業にとっては「高嶺の花」となっている。正確には「必要度合いが高くない,あるいは良く分からないアプリケーション」である。前回の調査対象であるCRM(カスタマ・リレーションシップ・マネジメント)でも触れたが,「高い(価格),遅い(使えるまでに時間が掛かる),見えない(効果がすぐ現れない)」の負の3条件がそろっている。今回の調査でも導入率は,DWHが10.4%,ナレッジマネジメントが7.7%である。この調査を開始してからの7年間,同じような導入率が続いていることから,状況がすぐには好転するとは思えない。

 DWHやナレッジマネジメントが採用されるとすれば,いろいろなアプリケーションの「要素技術」として取り込まれていく方向だろう。ようやく一部の大企業が,両者を使って効果を検証している状況なので,導入率はしばらく低いままだろう。

DWHは有名3製品が6割以上を占める

 以下,DWH,ナレッジマネジメントのパッケージ製品別シェア及び導入予定シェアを記す。有効回答数が少ないので参考値と考えていただきたいが,やはり有名どころの製品が上位に並んでいる。

 まず利用実態でみると,DWHはパッケージが89.2%,自社製オーダーシステムが10.8%と,導入済み企業のほとんどがパッケージ製品を利用していることが分かる(図1)。パッケージ製品別のシェアでは,ビジネスオブジェクトの「Business Objects」が30.1%でトップ,シェア2番手はレッドブリックの「Red Brick Warehouse」とコグノスの「Powerplay,impromptu」が15.7%で並んでいる。

図1●DWHパッケージの製品別シェア(Nは有効回答数)
図1●DWHパッケージの製品別シェア(Nは有効回答数)

 今後の導入予定では,パッケージ化率は93.9%とさらに高くなる(図2)。導入予定の製品別シェアは「Red Brick Warehouse」が35.5%,「Business Objects」が29.0%,「Powerplay,impromptu」が25.8%となり,上位3社で9割以上を占めた。

図2●DWHパッケージの導入予定シェア(Nは有効回答数)
図2●DWHパッケージの導入予定シェア(Nは有効回答数)

圧倒的に強いサイボウズの「サイボウズデヂエ」

 ナレッジマネジメントでは,パッケージが78.3%,自社製オーダーシステムが21.7%と,こちらも導入企業の多くがパッケージ製品を利用している。製品別シェアでは,有効回答数が少ないのでやはり参考値となるが,サイボウズの「サイボウズデヂエ」が61.1%と他の製品を圧倒して高いシェアを誇っている(図3)。2番手はNECソフト/ジャストシステムの「KnowledgeWorld」で7.4%。これにカナソフトウェアの「KANA IQ」が1.9%,サピエンスの「ドキュメント管理システム」が1.9%で続いている。

図3●ナレッジマネジメントの製品別シェア(Nは有効回答数)
図3●ナレッジマネジメントの製品別シェア(Nは有効回答数)

 今後の導入予定では,パッケージ化率はほぼ100%の96.6%となっている(図4)。導入予定の製品別シェアは「サイボウズデヂエ」が66.7%でさらにシェアを上げている。2番手以下は「KnowledgeWorld」の15.8%,「ドキュメント管理システム」の8.8%で,サイボウズの強さがさらに際立つ結果となった。

図4●ナレッジマネジメントの導入予定シェア(Nは有効回答数)
図4●ナレッジマネジメントの導入予定シェア(Nは有効回答数)

 しかし,今回の調査結果だけを見て,サイボウズデヂエが今後もこの寡占状況を保つとは言い切れない。なぜならDWH,ナレッジマネジメントのパッケージ製品は,市場としてまだほとんど確立されていないからだ。そう判断するためには,市場が活性化する段階まで,もう少し待つ必要がありそうだ。

 次回は最終回となるが,中堅・中小企業のアプリケーションの利用状況のまとめと提言を行いたい。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て98年に独立し,ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。