グローバル化の波は,数ある産業の中でも特に製造業を中心に押し寄せている。世界中の顧客を相手にする製造業では,需給のバランスを把握して適切な生産計画を立てることが非常に難しくなっている。

 また,生産物の品質・機能を基準にした顧客満足度が,企業のコーポレート・ブランドへ直接影響を及ぼすことも多くなっている。このため製造企業は最新のITシステムを活用し,生産過程における各業務を革新しようと努めている。

 だが,一口に製造業といっても「素材型」から「組立加工型」「生活関連型」などに至るまで,その属性は多岐に渡る。しかも,個々の企業独自に編まれている製造工程に「パッケージ化されたシステム」を適用するのは依然として難しい状況だ。こうした市場背景を見たうえで,調査データを見ていきたい。

パッケージ製品シェアは1桁台で数多くの製品が拮抗

 生産管理はパッケージが44.4%なのに対し,自社製オーダーシステムが55.6%と半数以上を占める「手組み市場」である(図1)。パッケージ製品別のシェアは,トップが富士通の「GLOVIA-C」で9.2%,2位が同率の4.6%で,NECの「Explanner」,NTTデータシステムズの「SCAW」,エクスの「電脳工場」,ティーピクスの「T Pics」の4製品が並んでいる。

図1●生産管理パッケージの製品別シェア(Nは有効回答数)
図1●生産管理パッケージの製品別シェア(Nは有効回答数)

 生産管理分野のパッケージ製品シェアは,かなり拮抗している。4製品が2位に同率で並んでいる上,ここでは挙げきれないほど多くのパッケージ製品が「その他」として分類されており,「その他」の比率は64.8%にも達している。

 生産管理パッケージの評価については,「自社製オーダーシステム」が6割近く利用されており,個々の製品のユーザー数が少ないので参考値程度に考えてもらいたい。評価が高かったのは,シェア2番手グループのNTTデータシステムズ「SCAW」及びティーピクス「T Pics」で,シェアトップの富士通「GLOVIA-C」は66.7という低めの評価となった(図2)。

図2●生産管理パッケージのシェア上位製品の評価(Nは有効回答数)
図2●生産管理パッケージのシェア上位製品の評価(Nは有効回答数)

 回答企業の年商規模別に見ても,過半数が自社製オーダーシステムを利用し,パッケージ製品のシェアが拮抗しているという傾向は変わらない(図3図4)。中堅・中小企業において生産管理アプリケーションは,販売管理と並んで「パッケージが遅れている業務システム」のひとつであることが分かる。

図3●生産管理パッケージのシェア(年商50億円未満,Nは有効回答数)
図3●生産管理パッケージのシェア(年商50億円未満,Nは有効回答数)

図4●生産管理パッケージのシェア(年商50億円以上,Nは有効回答数)
図4●生産管理パッケージのシェア(年商50億円以上,Nは有効回答数)

 最後に,生産管理パッケージの導入予定シェアを紹介する。回答数が少ないため参考値と考えてもらいたいが,ここでも抜きん出たパッケージ製品がないことが特徴的だ(図5)。

図5●生産管理パッケージの導入予定シェア(Nは有効回答数)
図5●生産管理パッケージの導入予定シェア(Nは有効回答数)

 次回は,新しいITアプリケーションとして「CRM(カスタマ・リレーションシップ・マネジメント)」「CTI(コンピュータ・テレフォニ・インテグレーション)」を取り上げる。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て98年に独立し,ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。