日経コンピュータ2006年10月30日号の記事をそのまま掲載しています。執筆時の情報に基づいており現在は状況が若干変わっていますが、BCP策定を考える企業にとって有益な情報であることは変わりません。最新状況は本サイトで更新していく予定です。

 日本IBMは10月11日、データセンターの運用計画を策定するサービス「High Density Computing Readiness Assessment」を開始した。データセンター事業者などに対して、サーバーの高性能化や高密度化が引き起こす電力不足などの解決策を提案するものだ。このような専用サービスが登場するほど、ブレード・サーバーといった最新サーバーの消費電力は、従来のサーバーとは比べものにならないくらい大きい。

総電力量を変えるために10億円

 従来のデータセンターでは、1ラックに引き込む電源の最大を2k~3kVAに想定しているのが一般的だ。しかし、「最新サーバーでは、2k~3kVAで足りるケースはまれ」(ソフトバンクIDCの三浦本部長)である。

 例えば、省電力サーバーとして開発された日本ヒューレット・パッカード(HP)のラックマウント・サーバー「DL360G5」でさえ、16台搭載で5kVA弱(図2)。もちろん、ベンダー側も省電力設計を進めており、同社が10月初旬に提供開始したブレード・サーバー「BL465c」は、16台搭載で3kVA強である。ただ、高密度化が進んでいるため、DL360G5では1ラック当たり最大42台搭載できたのが、BL465cでは64台。ラックにフル搭載すると、前者は12kVA強であるのに対して、後者は13kVA強になる。

図2●最新ハードウエアの消費電力の例
図2●最新ハードウエアの消費電力の例  [画像のクリックで拡大表示]

 ストレージの電力量も忘れてはならない。例えばEMCの製品の場合、中規模向けである「EMC CLARiX CX3 モデル40」の消費電力は最大740VAだが、大規模向けの「EMC Symmetrix DMX-3」となると、最大11.5kVAもの電力を消費する。

 ことはサーバーやストレージの消費電力だけにとどまらない。それらの消費電力が上がれば発熱量も増え、その分、空調設備を増強しなければならなくなる。万が一のときのためのUPS(無停電電源装置)も、より大きなものにする必要がある。データセンターでは、「サーバーやストレージ」、「空調設備」、「UPSや照明」が使う電力は、おおよそ3.5:5:1.5と言われる。サーバーなどの消費電力が上がれば、それ以上の電源が必要になるわけだ。

 あるデータセンター事業者は、「すべてのラックが3kVA使ったら、利用できる総電力量をオーバーしてしまうデータセンターは少なくない」と指摘する。総電力量は建設時に決まっており、もし、それを大きく変えるとなると、ビル内の配線工事を含め、数億~10億円かかってしまうことも珍しくないという。データセンターとしては、「利用できる電力を倍にしたとしても、ラック・スペースが変わらないため料金を倍にすることは理解が得られにくい」(NTTコムの荒井担当部長)。電力不足はデータセンターの死活問題になっている。

利用電力量を聞かないDCには注意

 ユーザー企業からすれば、電力不足はデータセンター事業者が考えるべき問題と思うかもしれない。しかし、データセンター選択時に確認をしておかなければ、思わぬトラブルに見舞われる可能性がある。

 データセンター設計で国内最大手であるNTTファシリティーズの村尾哲郎ソリューション営業部担当課長は、「ハウジングの場合、導入機器の構成を聞いてこないデータセンターもある。そうしたところは電源管理が徹底されていない可能性があり、いざサーバーを入れようとしても、引き込み電源が足りないということがあり得る」と指摘する。特に、古いデータセンターで電源管理がされていないと致命的だ。

 前述したシーエー・モバイルの場合、当初から利用する電源容量を聞かれていたため、そうした問題は起きなかった。ただ、高性能なサーバーを使うためにIIJが設定している電源では容量が足らず、無理を言って増設してもらう必要があった。その結果、当初予定していた費用に比べて、およそ倍になったという。

 また、サーバーの電源を入れるときは、通常時の数倍から10倍以上の電流(突入電流)が瞬間的に流れる点も知っておきたい。電源電圧が不安定になるため、安定供給できる容量を備えたUPSを選択しなければ、サーバーが起動しないことがある。「インテグレータやデータセンター事業者がそういった設計までできないと、システムを安定稼働させることは難しい」(IIJの保条英司営業本部長)。

 なお、特にストレージでは消費電力以外にも注意すべきことがある。図2で示したように、大規模ストレージとなると重量が1700kgにもなる。一般のオフィス・ビルをデータセンターに転用しているようなケースでは、耐荷重の制限を超えてしまう可能性がある。

疑問2は…本当 機器構成を相談し、事前のチェックが必須