日経マーケット・アクセスが行った企業情報システム担当者調査で,2006年12月のIT予算執行が何らかの分野で予定通りでなかった,とする回答者の,予算執行が予算通りでなかった理由を,今度は企業規模別に見てみた。

 利用就業者数「1000人以上」の大規模ユーザーはIT予算執行率INDEXが-2.0%(前回2006年11月実績は-5.3%)で,全体平均の-4.6%に比べると比較的予算執行(消化)率は高い(2月8日付け記事参照)。しかし「予算と執行のずれの理由」では,「新プロジェクトの発生」~「会計処理上の都合による執行予定の前倒し」という積極投資側の要因を合計すると約15%,消極投資側の要因(「プロジェクトのキャンセル」~「会計処理上の都合による執行予定の先送り」)を合計すると約35%と,大きく消極投資側の比率が上回った。前回2006年11月実績は積極21.7%,消極21.6%で拮抗,全体のIT予算執行率INDEXがほぼ同じ-4.5%だった2006年9月実績では積極35.5%,消極18.8%で大きく積極側に振れていた。

 今回の大規模ユーザーの回答では,「工程見直しによる1カ月程度の先送り」が,前回調査(2006年11月実績)の7.2%から16.7%に急増したのが目立つ。年末をマイルストーンとして進めてきたプロジェクトの遅延が,ついに12月で顕在化したものと見られる。3カ月前の調査(2006年9月実績)で「新プロジェクトの発生」が20.8%と飛びぬけて高い比率を示したのと同様,大規模ユーザーの「予算執行のずれ要因」の回答傾向からは,情報システム構築プロジェクトに四半期単位で訪れる“季節感”が読み取れる。

 「300人未満」の小規模ユーザー(IT予算執行率INDEXは今回調査-6.4%,前回調査-5.0%)は,積極投資側の15.6%に対し消極投資側が24.6%。積極側の合計比率は前回2006年11月実績とほぼ同じで,消極側の合計比率が約5ポイント減少した。消極側のうち「工程見直しによる先送り」「会計処理上の都合による先送り」の比率が前回調査より合計約7ポイント減少している。

 今回,中規模ユーザーにあたる「300人以上~1000人未満」(IT予算執行率INDEX-2.9%)は「予算と執行のずれの理由」への回答数が30件に満たないため参考値程度だが,「プロジェクトの先送り」が22.7%と目立って大きかった。

◆注
 調査実施時期は2007年1月中旬,調査全体の有効回答は2523件,うち情報システム担当者の有効回答は548件。
 本文中の「予算執行率INDEX(平均の予算執行率)」は,選択式回答の「50%超の未達」を-65%,「20%~50%の未達」を-35%,「10%~20%の未達」を-15%,「10%未満の未達~10%未満の超過(ほぼ予算通り執行)」を0%,「10%~20%の超過」を+15%,「20%~50%の超過」を+35%,「50%超の超過」を+65%に換算して加重平均した。
 「企業規模」は,「回答者が担当・関与する情報システムを利用している就業者数(従業員,パート/アルバイト,派遣就業者を含む)」について聞いたものである。

図●2006年12月のIT予算執行が,予算通りでなかった理由(回答者の担当領域全般について,企業規模別)