写真1● AppleのWebサイトトップページの掲げられていたメッセージ
「“The first 30 years were just the beginning. Welcome to 2007”---これまでの30年は始まりに過ぎない。ようこそ2007年へ」。
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写真2●「Macworld San Francisco 2007」基調講演映像
AppleのWebサイトでストリーミング配信しており,誰でも無料で視聴できる。
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 そのうわさは本当だった。昨年末からアナリストやMacファンの間でささやかれていた米Appleの携帯電話は米国時間1月9日,Steve Jobs CEOのMacworld基調講演で明らかにされた(関連記事)。製品名もうわさ通り米Cisco Systemsが持つ商標と同じ「iPhone」であった(関連記事)。

 Appleは今回のMacworldに先立ち,Webサイトで「これまでの30年は始まりに過ぎない」とするメッセージを掲載(写真1),Macworldの会場にも同様の看板を掲げた。挑戦状ともいえる自信に満ちた文言。開催前から何か違うものが感じられた。なんらサプライズもなく期待はずれと揶揄された昨年の開発者会議とは大きく異なるイベントとなった---。

 今回の本コラムでは,このSteve Jobs CEOの基調講演について,その映像内容(写真2)を今一度確認しながらレポートしてみる。講演で披露されたiPhoneとApple TV,そして看板に掲げられたもう1つの文言「Welcome to 2007」が意味するものはいったい何なのか? Appleの今後の展開について考える。

「革新的な3つの製品」を発表?

 約2時間の基調講演でSteve Jobs氏がその大半の時間を割いて説明したのはiPhoneだった。講演開始の30分後,Jobs氏は「この2年半,私はこの日を待っていた」と切り出し,iPhoneについて語り始めた。「1984年,MacはAppleだけでなくコンピュータ業界全体を変えた。2001年,iPodは我々の音楽の聴き方だけでなく音楽業界全体を変えた。そして今日,我々は革新的な製品を発表する」(同氏)。

 「その1つはワイドスクリーンでタッチ・コントロール付きのiPod。そして2つ目の製品は革新的な携帯電話機だ。3つ目はインターネット通信デバイス」---。Jobs氏のこの言葉で誰もが3つの製品を想像したとき,同氏はおもむろにこう言った。「実はこの3つは全部1つのデバイスに備わっている。これを我々はiPhoneと呼んでいる。そして我々はこれで携帯電話を再定義する」。会場が歓声で沸いた。

「世界で最高のポインティング・デバイス」

 Appleが何をもって携帯電話を再定義するのか? その根拠の1つとしてJobs氏が挙げたのは,ユーザー・インタフェースだった。壇上のスクリーンには「Nokia E62」「Palm Treo」「moto Q」「BlackBerry」といった他社製スマートフォンの写真が映し出された。そしてJobs氏はそれらがすべてキーボードを備えていること,そうしたボタン類が固定されていることが問題なのだと指摘した。アプリケーションはそれぞれ使い勝手が違う。しかしキーボード/ボタンの位置はアプリケーションが変わっても変化しない。このことが機器を使いづらくし,とてもスマートとは呼べないものにしていると同氏は批判した。

 「だから我々はそうしたボタン類を取り払った」とJobs氏は続ける。「それに代わる方法はある。それは我々が20年前にパソコンで築いたもの。ポインティング・デバイスだ。しかし携帯電話でマウスを使うわけにはいかない。では何を使う? スタイラスか? ノー! 誰があんな煩わしいもを欲しいと思う? Appleはみなが生まれながらにして持っている,世界でベストなポインティング・デバイスを使う。指だ」(同氏)。

 AppleがiPhoneで採用したのはタッチ・スクリーンと,アプリケーションごとに必要に応じて現れるQWERTYソフト・キーボード。そしてそのタッチ・スクリーンでは,複数の指を使って自在に操作/入力できる同社の特許技術「Multi-Touch」を採用しているのが革新的なのだとJobs氏は説明した。例えば人さし指と中指を徐々に開くように画面をなぞれば,写真が拡大する。そんな使い方ができるのだという。

 そして同氏は次のようにも説明した。「Macではマウス,iPodではクリックホイールだった。こうした画期的なインタフェースによって革新的な製品がもたらされた。そしてAppleはこれからMulti-Touchでこれまでとはまったく違うスマートフォンを提供していく」---。

 さらに同氏は,iPhoneに搭載されているOSがMac OS Xであることも明かした。iPhoneは,携帯機器でありながらもデスクトップ並みのアプリケーションを目指した。その結果,Mac OS Xが備えるマルチタスクといった機能が不可欠だった。Mac OS Xを採用することによって,格別に使いやすい携帯電話を提供できることになった。そうJobs氏はMac OS Xの利点を強調した。