写真1 富士通の総合デザイン研究所(当時)がデザインしたモックアップ端末「マルチメディア・プレーヤ」(2000年1月3日号p.86より)
写真1 富士通の総合デザイン研究所(当時)がデザインしたモックアップ端末「マルチメディア・プレーヤ」(2000年1月3日号p.86より)
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写真2 クアルコムCDMAテクノロジーズ(当時)がコンセプト機としてデザインしたカメラ一体型端末(2000年1月3日号p.86より)
写真2 クアルコムCDMAテクノロジーズ(当時)がコンセプト機としてデザインしたカメラ一体型端末(2000年1月3日号p.86より)
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写真3 クアルコムCDMAテクノロジーズ(当時)がコンセプト機としてデザインした手袋一体型ウエアラブル端末(2000年1月3日号p.86より)
写真3 クアルコムCDMAテクノロジーズ(当時)がコンセプト機としてデザインした手袋一体型ウエアラブル端末(2000年1月3日号p.86より)
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写真4 NTTドコモが販売した腕時計型のPHS端末「WRISTOMO」(リストモ)
写真4 NTTドコモが販売した腕時計型のPHS端末「WRISTOMO」(リストモ)
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 年の瀬も押し迫ったこの時期,日経コミュニケーションでは新春号の制作に取り掛かっています。新春号の特集の内容は年によって変わりますが,多くの場合は将来予測ものとなります。今からさかのぼること約7年前の,2000年1月3日号もそうでした。特に,2000年といえば20世紀最後の年ということで,当時の1月3日号では「ミレニアム・スペシャル 21世紀の通信」という70ページにも及ぶ一大特集を作成しました。

 そのなかに「21世紀のモバイル端末はこれだ!」という記事がありました。それは「ブレイク・タイム」という息抜きページの一つでもあり,真剣な予測というよりも,むしろ「こんな端末が登場すれば面白い」程度のもので,さまざまな電子機器や生活用品と組み合わされた複合端末を期待を込めて紹介したものでした。2000年1月といえば,第3世代携帯電話はいずれの事業者も提供しておらず,NTTドコモが前年の2月に「iモード」をスタートしたばかりといった時代です。今回は,それらの端末が現実のものになっているのかどうかをちょっと検証してみましょう。

 まず写真1をご覧ください。これは,富士通の総合デザイン研究所(当時)がデザインした「マルチメディア・プレーヤ」です。写真を見ると分かるように,本体とイヤホン部が分かれるようになっており,当時の記事では本体とイヤホンはBluetoothで無線接続すると説明されています。ご存じのように,動画再生/音楽再生に対応する携帯電話は,各社から製品化されました。Bluetooth対応のイヤホンも,つい先日パナソニック モバイルコミュニケーションズが発売したように既にあります(ニュースリリース)。製品の形態こそ違いますが,このマルチメディア・プレーヤは間違いなく現実のものとなっています。

 ではカメラ一体型端末はどうでしょうか。携帯電話に初めてデジタルカメラ機能を搭載したJ-フォン(現ソフトバンクモバイル)の「J-SH04」が登場したのは,2000年秋のことです。それ以降,現在は携帯電話にカメラが付属することは当たり前になっています。とはいえ,写真2のように携帯電話モジュールを内蔵したカメラ機はいまだに登場していません。カメラ機に搭載されたのは,無線LANモジュールでした。デジタル一眼レフでは,オプションでカメラに直接装着できる無線LANアダプタが用意されていますし,無線LAN機能内蔵のコンパクトカメラもあります。画像のような大容量ファイルを転送するには,携帯電話では速度が遅く,通信コストもかかってしまうため,携帯電話ではなく無線LANの方が適していたからです。とはいえ,通信機能を搭載しているという意味では写真2のようなカメラも一応は実現したと言ってよいでしょう。

 しかし当時の記事で紹介した未来端末でも,お世辞にも実現したとは言えない代物もあります。写真3のような手袋一体型ウエアラブル端末などは,実際には見たこととも聞いたこともありません。当時としても,実際に製品化されることはまずないだろうとは考えていました。とはいえ,ウエアラブル端末が全く荒唐無稽かといえば,そうとも言い切れないでしょう。

 例えば,NTTドコモは2003年5月に腕時計型PHS端末「WRISTOMO」を台数限定で発売しました(写真4,当時の記事)。またWRISTOMOのような完全な時計型デザインではありませんし,販売もされていませんが,ウィルコムもワンセグ放送の視聴が可能な腕時計型PHS端末「スーパーワンセグTV Watch」をアサヒビールの2006年夏のキャンペーン用に提供しています。スーパーワンセグTV Watchは,無線通信技術(アンテナ部および無線機)を搭載した汎用多機能通信モジュール「W-SIM」を使って実現したものです。

 こうした超小型通信モジュールが既にあるのですから,商品化は難しいとしても,今後キャンペーン用途などで手袋型PHS端末が登場しないとも限りません。もしそのようなことが現実に起こったら,この記事を思い出しながら,筆者はビールなり缶コーヒーなりを必死になって飲むことになるでしょう。

この記事は日経コミュニケーション読者限定サイト
日経コミュニケーション Exclusive」から転載したものです。