テレコムサービス協会で幹事会議長を務めるインテックの滝沢光樹・取締役執行役員専務
テレコムサービス協会で幹事会議長を務めるインテックの滝沢光樹・取締役執行役員専務
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 国内でも動きが本格化してきた次世代ネットワーク(NGN)。12月20日にはNTTのNGNフィールド・トライアルも始まる。旧第二種電気通信事業者はNGNにどう関与していくのか。旧二種事業者の業界団体であるテレコムサービス協会で幹事会議長を務めるインテックの滝沢光樹・取締役執行役員専務に,NGNへの取り組み,不満や要望,今後の期待などを聞いた。(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション

--テレコムサービス協会としてはNGNにどう取り組んでいくのか。

 現状はNTTが公開する接続インタフェースを検証している段階だ。接続インタフェースは,(1)アプリケーション・サーバーとネットワーク間の「SNI」,(2)ユーザー端末とネットワーク間の「UNI」,(3)ネットワーク間の「NNI」の三つがあるが,この中で主に関係するのはNNIになる。

 NNI以外では,SNIでもビジネスチャンスがあると考えている。SNIはコンテンツ・プロバイダ向けのインタフェースだが,コンテンツは持っていても技術面でサービスの提供までは難しいというプレーヤーは多いと思われる。これらのプレーヤーが設備の運用管理などをアウトソースする先として我々が活躍できる場があるはずだ。

 ただ,実際に何をやるかは会員企業が個別にNTTと交渉することであり,詳細を把握しているわけではない。会員企業に共通する要望や課題があれば,「NGN事業者間連絡会」などを通じて出していく。

--NGNに対する不満や要望はあるか。

 最も不満に感じているのは,NTTが今後のロードマップを明確に打ち出していないことだ。我々はNTTから専用線などを借りて顧客にサービスを提供している。ある日突然「NGNに統合するのでやめます」と言われたら,ビジネスを継続できない。既存の専用線サービスはNGNに統合して終息していくのか,あるいは今後も提供を続けるのか。ロードマップをきっちりと明示してほしい。もちろん経営の都合があるのだろうが,NTTほどのドミナント事業者であれば社会に公表する義務がある。

 「オープン化」という点でも不満が残る。NTTが公開する接続インタフェースは,ネットワーク制御の部分がブラックボックス化されている。理想を言えば,我々の方で制御機能を持てるようなアンバンドル化をお願いしたい。このようなアンバンドル化は無理でも,NTTがさまざまな制御機能を開発して公開してくれれば構わない。しかし,現状ではどのような制御機能が開発されているのかも我々には分からない。

 料金水準が見えないのも困る。現時点で料金水準を打ち出すのが難しいのは十分承知しているが,我々としてはいくら高機能でも料金が分からない前にやりたくない。ふたを開けてみれば結局,高くて使えなかったという可能性もある。

--逆にNGNに期待する点は。

 まず挙げられるのがIPマルチキャスト。NGNが通信と放送を本格的に融合したプラットフォームに発展する可能性は十分にある。次にセキュリティ。インターネットと違い,NGNは閉じた世界。本当にセキュアなネットワークになるのか不安な面もあるが,同時に期待も大きい。

 このほか,NGNを生かした新しいサービスの登場に期待している。中でも期待したいのが,BtoBを対象としたサービスだ。現状,インターネットは不特定多数を相手にしたBtoCのビジネスが中心で,BtoBのビジネスは品質やセキュリティ,信頼性を考慮して独自網を構築するのが一般的だ。品質やセキュリティ,信頼性という点では,NGNはインターネットと独自網の中間の位置付けになる。新たなBtoBの市場ができると面白い。