ビフォー・ アフター 製造業や流通業が戦略的な顧客接点として強化しているのがコンタクトセンターだ。重要な拠点ではあるものの、通常はパート社員がオペレーターとして顧客に電話やメールで対応する。顧客との対応に長けているのはパート社員ということになるが、正社員に比べて離職率が高いなどの課題がある。クレジットカード大手のオーエムシーカードも2003年9月の改革まではそうだった。 |
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東京都墨田区にあるOMCサービスセンター。大多数は女性だが、新卒社員の男性の姿も |
クレジットカード会社にとって、コールセンターは最後の砦とりでだといえる。解約を申し出る顧客は通常、コールセンターに電話をかけてくるからだ。カード会社でなくても商品やサービスに関するクレームをコールセンターに訴えてくる顧客は少なくない。ここでの対応1つで長年のファンがクレーマーにもなる。売り上げはもちろんのこと会社への信用、ブランドイメージを左右する存在だ。
オーエムシーカードは、コールセンター「OMCサービスセンター」を戦略拠点と位置づけて、2003年から改革に着手。同社は2006年2月期に営業収益1459億8900万円、純利益183億6300万円を計上し、3年連続の増収増益となった。その間、カード会員の数は15%増の811万3000人となった。この好業績をコールセンターが下支えした。
OMCサービスセンターの改革のきっかけは、2003年9月に導入された「キャリアパス制度」である。これは同センターのオペレーターの活性化を促す人事制度だ。
導入にかかわった会員管理本部の近松洋年・企画管理部部長は、コールセンター運営者の誰もがぶち当たる矛盾の解決策を探っていた。コールセンターは重要な顧客接点だが、正社員に比べて離職率の高いパート社員によって運営されている。ベテランのオペレーターは、パートといえど大切な戦力。退職は大きな痛手だ。パート社員が長く定着し、培ったノウハウを積極的に交換し合うような風土作りを近松部長は考えていた。
近松部長が着手したのは、パート社員の活性化につながる人事制度作りだった。従来、同社のコンタクトセンターで働く社員はスーパーバイザー(SV)、アシスタントスーパーバイザー(ASV)、トレーナー、オペレーター、研修という5つの階層に分かれていた。
正社員がSVやASVとして指導・監督的な立場になり、パート社員はオペレーターか、電話の対応(受電)をしつつもオペレーターの指導にも当たるトレーナーになっていた。明文化された規定があったわけではなかったのもののパート社員がASV以上に昇格することはなかった。
人事改革で活性化図る
新制度の下では経験を積んだ優秀なパート社員もSVやASVに就任できる。パート社員を積極的に重要なポストで活用することで運営にかかわる正社員の比率を下げることができる。パート社員としてもSVへの道が開けることでモチベーションは上がる。近松部長は「正社員は2~3年で異動してしまう。ベテランのパート社員がノウハウを持っている」という。
新人事制度の特徴は、パート社員の評価を定量化したこと。その際、SVやASVに起用する優秀なオペレーターとは何なのかを見極めることが大切になってくる。OMCカードではオペレーターの技量を客観的に判断するために、3つの評価指標を取り入れた。
1つ目は受電の実績。1時間当たりに何件の電話に対応できるかという効率性だ。オペレーター業務の1人当たりの生産性を測るのに重要な指標で、呼量予測に基づいたシフトを組む際にも参考になる。
次に対応時のサービスレベル。敬語を含めた話し方や、顧客の要望・疑問に対する答え方など応対のうまさだ。いくら手際が良くても印象が悪ければ顧客は満足しない。これは数値化しづらい部分だが、外部の調査会社にオペレーターの録音テープを渡して採点してもらっている。「S・A・B・C・D」の5段階に評価される。
最後の項目は解約回避率。何らかの不満を抱いたカード会員が解約を申し出る電話をかけてきた時に、どれだけの確率で引き留めることができるのかを数値化したものだ。分母は解約希望の電話数、分子は引き止められた件数で計算する。
解約を希望する理由は様々。解約を希望する理由の中には商品に関する誤解に起因することも少なくない。誤解であれば丁寧に説明して理解してもらえれば解約を思い留めることができる。
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●オペレーターのやる気を引き出す [画像のクリックで拡大表示] |