パートのスーパーバイザー誕生

 この3項目をポイントに換算して優秀なオペレーターの技量を定量化する。オペレーターの能力が数値化されれば、ローテーションを組む際にも参考になる。同じ時刻に未熟なオペレーターばかりを待機させていれば混雑の元になる。

●「オペレ-ターDB(データベース)」の画面。各オペレーターの評価に必要な情報を一元管理している
●「オペレ-ターDB(データベース)」の画面。各オペレーターの評価に必要な情報を一元管理している
会員管理本部企画管理部の近松洋年部長。キャリアパス制度の導入にかかわった
会員管理本部企画管理部の近松洋年部長。キャリアパス制度の導入にかかわった

 300人近いオペレーターの評価を日々管理し、毎月各自にフィードバックしていくために同社は「オペレーターDB(データベース)」を構築した(上の図参照)。「これまではオペレーターを評価する情報があちらこちらに散らばっていた」(近松部長)。情報を一元管理することで制度の運用を効率化している。

 新制度の運用開始から3年目の昨年秋に、初めてパート社員のスーパーバイザーが誕生した。OMCサービスセンターで働き始めて10年目の天野達代スーパーバイザーだ。天野スーパーバイザーは「自身の能力・努力に対する評価がはっきり出る。厳しい半面、ステップアップが可能になるので高いモチベーションが維持できる」と新制度を評価する。

 3つの評価指標を定めることでオペレーターは各自が努力すべき方向性を知ることができる。例えば、応対や解約回避に比べて受電効率が劣っている場合、同じチーム内でその部分を得意とするオペレーターの応対を見学したり、録音テープを聞くなど自らのスキルを向上できる。3つの評価指標に加えて欠勤や遅刻・早退、クレームなどを加味した評価をオペレーターは毎月、ストレーナー以上の指導役との面談を通じてフィードバックされる。

最短で3年でスーパーバイザー

 さらに2カ月か半年に1度のSVとの面談で昇格が伝えられる。従来は社歴が同じオペレーターは全員が同じ処遇であったが、キャリアパス制度ではオペレーターはランク1~5までの5段階に分けられた。オペレーターとしてシフトに組み込まれる前には研修と呼ばれる立場でOJT(現場研修)を受けることになる。

 新制度下では、研修を含めるとサービスセンターでのキャリアは9段階になり、それぞれ時間給が異なる。オペレーターの一番下位であるランク1とSVではおよそ2倍の開きがある。最短の場合、入社後34カ月でSVになれる可能性があるという。

 半年に1度の査定ではこのランク変動が告げられることになる。3つの評価指標が向上し基準値を満たしたものは昇格し、給与も上がる。向上しなければそのままだが、評価指標が下がれば降格や時間給の減少もある。

 降格した場合は同じチームのSVからトレーナーまでの社員が指導に当たる。SVにはチーム平均の評価指標という基準値を割り当てられているからだ。キャリアパス制度は単純な成果主義ではなく、パート社員を運営に対して積極的な参加をうながす仕掛けだ。天野スーパーバイザーも「チーム管理は大変だが、刺激になる」と話す。

オペレーターを指導する天野達代スーパーバイザー(SV)。パート社員としては初めての就任
オペレーターを指導する天野達代スーパーバイザー(SV)。パート社員としては初めての就任

新入社員が1年間研修

 キャリアパス制度の導入からもうすぐ3年がたつ。「公平な評価をしたら人件費は少し上がった。しかし、確実に会社に対する貢献はコスト増を上回った」と近松部長は話す。評価指標の平均値の変化を見れば、その言葉もうなづける。2003年度上期と2005年度下期を比べると、1時間当たりの受電効率は5%増、サービスレベルは1.5倍に、カードの解約を回避する確率は2倍になった。

 オーエムシーカードでは今春入社した新卒の全社員がOMCサービスセンターでオペレーターとして勤務している。商品の知識を現場で身に付けられるうえに顧客と直接触れ合うことで学ぶことが多いというのがその理由だ。

 受け入れ側となった近松部長は「スピーディーにバランス良く基礎知識を身に付けられるはずだ」と話す。その期間は1年。研修期間に数日から数週間、新入社員をコールセンターに配属させる企業は多いが、1年間という長期間は珍らしい。新入社員は商品の特性だけでなく、組織を活性化させるノウハウも学び取ることができそうだ。

●オーエムシーカードの業務改善のポイント
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